マウスコンピューターは、ゲーミングPCブランド「G-Tune」の主力となるミドルタワーPC「NEXTGEAR」、ミニタワーPC「NEXTGEAR-MICRO」のケースデザインを新たにした。新ケースはゲーマーにアンケートを行ない、そのニーズをくみ取る形でデザインされているという。そこで、今回はG-Tuneの製品担当である安田祐三郎氏に新ケースのコンセプトについて話をうかがった。
新ケースは、曲面がアクセントとなっていた従来ケースから一転してフラットなデザインを採用する。フラグシップモデルの「MASTERPIECE」シリーズに通じる"シンプル""フラット""ソリッド"というイメージを表現している。
ハデさを抑えたフラットデザイン。ストイックなゲーマーの意をくむ新ケース
――ケースを新設計することになったきっかけはあったのでしょうか
安田氏:ケースの新調について何年周期のように時期を決めているわけではありません。ただ、前モデルが6~8年前の設計ですので、その間にお客様のニーズも変化しています。
普段からゲーム関連のイベントにも積極的に参加し、情報を収集していましたが、現在のゲーミングPCの位置付けがどうなっているのか、いまのモデルがニーズにしっかりマッチしているのだろうか、そう疑問に思い始めていたころでした。現在のニーズに合わせるならいまが最適なタイミングだろうということで、まずはゲーマーの方々にアンケートをとってみることになりました。
――どのような方法でアンケートをとられたのでしょうか
安田氏:今回のアンケートは、2017年夏、マウスコンピューターがスポンサードしているゲーム配信番組「裏・顔TV」上で実施しました。具体的には、ニコニコ生放送のアンケート機能を利用しています。
ユーザー層からすると、ゲーマーの中でも格闘ゲーマーの割合が多いと思われます。もしかしたらMOBAやFPSを楽しまれるゲーマーさんのご意見とは少しズレがあるかもしれません。ただ視聴者はおよそ3,000人で、回答してくれたユーザーが全員ゲーマーというわけではないと思いますが、十分に有効な回答が得られたと感じております。
――アンケートの結果を見たときの印象はいかがでしょうか
安田氏:ストイックなゲーマーが多いという印象です。PCはゲームをするためのツールの1つという認識で、装飾は不要、とがったデザインもカラーも、LEDも不要と考えている方が多いようです。シンプルなデザインを好まれているようです。
――DIY市場で販売されているゲーミングPCケースはとがったデザインのもの、LEDでハデに装飾したものが多いですが、これとは逆になりましたね
安田氏:われわれもゲーミングPCにはLEDが付きものと、海外のLANパーティやインスタ映え、ゲームプレイ配信などからそうしたものだという印象でした。しかし実際にアンケートを取ってみるとこのような結果でした。
確かに国内ではLANパーティもこれから盛り上がっていくという段階ですし、ゲームプレイ配信にしてもPCが映るシーンはあまりありません。LEDがはやるとしてもまだまだ環境が整うまでに時間がかかるでしょうから、通常モデルに関してLEDは必要ないと判断しました。
一方で、LEDが欲しいというお客様も一定数いらっしゃいますので、そうしたニーズには強化ガラスのクリアサイドパネルを選んでいただくことで対応できます。このパネルもそこまで中身を目立たせるのではなく、スモーク仕様としています。LEDもRGB対応のハデなものではなく単色、G-Tuneのテーマカラーであるレッドを採用しました。
――外観デザインに対するアンケート結果ではフラットが好みということでしたね
安田氏:どんな形が好きかというアンケートでは、完全フラットという要望が大半を占めました。また、かなり多くのユーザーが天板の上にものを置くと答えていらっしゃいますので、両製品ともフラットでファンのない天板を採用しています。
――NEXTGEAR-MICROでは完全フラットですが、一方でNEXTGEARでは前面に傾斜を設けていますね
安田氏:確かに完全フラットというのがアンケートで得られた要望ですが、ともにフラットにしてしまうと同じケースのATX版・マイクロATX版になってしまって、それぞれの特徴が薄れてしまいます。
そこで、NEXTGEARでは前面に傾斜を付けることで、NEXTGEAR-MICROをそのまま大きくしただけではない印象を与えています。前面上部を旧NEXTGEARのソリッドなイメージを継承した意匠にするなど、デザインにこだわりました。
――NEXTGEARでは天板部にインタフェースを置いています。これは比較的めずらしいと思いますが、どのような狙いがあるのでしょうか
安田氏:NEXTGEAR-MICROでも、前面上方の角部分にインタフェースを設けていますが、多くの方が床置きされるため、イスに座り机に向かった状態でアクセスしやすいように上部にレイアウトしました。天板部ですとホコリ対策も必要ですが、特に影響がでやすいHDMIとカードリーダーにはカバーをつけています。
――光学ドライブ、前面インタフェースについてのアンケート結果からは何か読み解けるものはありますか
安田氏:光学ドライブはかなりの割合で必要と答えた方が多くいらっしゃいました。PCゲームはダウンロードが主流ですが、例えば同人ゲームなどでまだまだメディアが必要というケースがあるのかもしれません。
ただし、すでにお持ちの方もいるということで、標準では装備せず、搭載できるスペースを用意しつつBTOで対応する形をとりました。BTOという一手間はありますが、購入層の多くはBTOに親しんでいる方で問題ないという判断しました。
フロントのインタフェースでは、HDMIを要望する声を多数いただきました。われわれとしてはVR用途を想定していましたが、配信用のキャプチャユニットを装着するためだったり、必要に応じて着脱するサブディスプレイのためだったりと、HDMIを前面に用意することは有効であるようです。
逆にBTO PCで多いカードリーダーは、すでに多くの方が何かしらお持ちで必要ないという声が大きかったです。最新インタフェースのUSB 3.1については、仮にコストが上がってしまうかもしれませんが必要ですか、という問いに対して「まだ不要」という答えの方が多かったです。
こうしたアンケート結果に基づいて、NEXTGEAR-MICRO・NEXTGEARの両ケースを開発しました。1から開発というわけではありませんが、ケースベンダーの選定、ベースモデルの選定を経て、デザイン案を検討してはテスト・検証を繰り返し、約1年を経て製品化できました。