虐待した親への取材も想定
――実際に児童相談所に踏み入れたのは、今回が初めてですか?
そうですね。お子さんのプライバシーもあるので、なかなか取材させていただくのは難しいんです。でも今回は、預かっている子供たちともコミュニケーションをとらせていただいたので、貴重な映像になっていると思います。ただ、本当に悲しいのは、そこにいる子供たちがみんなかわいらしくて、優しくて、明るいんですよ。家庭で母親に虐待を受けた子でも、心に傷を負っていると思うんですけど、「お母さんに会いたい」って言うんです…。現実には、そのお母さんに虐待を受けたから保護されているのに、「お母さんにこんなこと教わったんだ」とか「こんなことしてもらったんだ」って、お母さんの話をずっとするんですよ。
それを聞いていると、虐待があれば親御さんから無理やり引き離して保護すればいいという単純なことではなくて、もちろん命の危険がある時は別ですが、親子の関係をうまく改善してあげて、親が手をあげないようにして何とかお子さんを家庭に戻してあげることも、1つの目標として大切なんじゃないかなと思いました。昔と環境が違って、孤独な子育てになっていたり、貧困の問題もある中で、従来の家庭の機能としての母親や父親の役割が求められすぎて、追い詰められてるんじゃないかとも、今回取材して思ったんですよね。
――今後も継続して取材をされていくということですが、そうすると子供を引き離された親を取材するということも考えられているんですか?
そうですね。殺すところまでいくのは別ですけれど、子供に手をあげる親は、鬼や悪魔ではないと思うんです。自分だってもし環境が違って、自身が生きるのに必死で子供が全然言うことを聞かなかったら…と考えると、実は紙一重かもしれない。だから、社会として児童虐待の問題に向き合わなければいけない状況にまで来ているんじゃないかと思います。
――まさに、先ほどおっしゃられた「多角的な取材」ですね。この取材をされるようになって、ご自身のお子さんへの向き合い方への変化はありますか?
うちの2歳と3歳の男たちは「コラ!」って言うと散り散りに逃げるので、首根っこ捕まえて「ダメだって言ってるでしょう!」ってまた怒ったりするんですが、そんな子供たちが寝静まると、そういう風に怒鳴る幸せっていうんですかね、それがありがたいねという話を夫としたりしています。泣き笑いの毎日でてんてこ舞いなんですが、それが幸せなんだということを、あらためて実感するようになりましたね。
社会全体で考えていく問題
――『プライムニュース イブニング』が始まる前に、島田さん、倉田大誠さん、反町理さんにインタビューさせていただきましたが、その際に反町さんが、島田さんに「子育て世代の代弁者」を期待されていました。まさにその役割を果たすような取材をされていると思います。
やっぱり自分がやらなきゃという気持ちは持っています。生活に密着したような軽い話題も好きなんですが、報道番組をやるからには、命というものが簡単に扱われないようにするという意識を常に持っていかなければならないと思っていますから。でも、この問題については、反町さんも密かに、いろいろ電話取材したりして、協力してくれてるんですよ。「島田、このニュース知ってるか?」って怖い顔で聞いてきて、「知らなかったです」って言うと、「あぁ、メールで資料送っとくから」って(笑)
――島田さんは前のインタビューで「反町さんという、知識に裏付けされた、どっしり構える人がいるので、受け止めてもらえる」とおっしゃっていたので、その点も実践できているんですね。
一方で倉田さんという36歳の独身男性がいるんですけど、彼にも思うことがあるみたいで、「こういう場合、彩夏さんはどう思います?」って、いろいろ話しかけてくれるんですよ。この問題は、子供がいる・いないということではなく、1人の人間として、社会全体で考えていくものだと思うんです。だから私も、母として接していきたいテーマではあるんですけれど、取材をするに当たっては、感情移入しすぎないように、気をつけるようにしています。
――昔、福岡で5人家族の車に飲酒運転の車がぶつかって、3人の子供が亡くなったという悲惨な事故があったとき、マスメディアが大きく取り上げたことで社会的関心が高まって、飲酒運転事故の件数が減少していくということもあったじゃないですか。今回の取り組みで、児童虐待が減っていくことになるといいですよね。
実際に国も動き始めているので、きちんとこれを継続して、みんなで議論していくということが大事になると思いますね。
『コード・ブルー』vs反町キャスター、異色の対談も
――『プライムニュース イブニング』がスタートして4カ月が経過しましたが、ここまで振り返ってみていかがですか?
いろんなことがありましたが(笑)、キャスター同士の仲がすごく良いんですよ。最初はみんな初めましてだったので、試行錯誤の部分も多かったんですが、私なら今回の児童虐待のように、だんだん自分がこれをやりたいというテーマが出てきたり、若いアナウンサーからもどんどん取材に出て、こういうことをやってみたいという声が出てきたりして、いいチームワークになってきたと思います。
――劇場版『コード・ブルー』の山下智久さん、新垣結衣さんらメインキャスト5人が公開日の7月28日に、朝の『めざましテレビ』から帯番組をジャックする中で、『プライムニュース イブニング』は、対談相手にまさかの反町さんをぶつけましたよね(笑)
あれは衝撃でしたよね。5人に「分派活動は?」と聞いたり、「でも、その観点に立つとね」って切り込んだり(笑)。ああいうときって、普通俳優さん女優さんに名刺なんて配らないじゃないですか。でも、反町さんは1人1人に配ったそうですよ。『めざましテレビ』に出ているときも、スタジオの端からぬらりひょんのように見学してたそうです(笑)
――さすが、事前取材もしっかりされてらっしゃる(笑)。あれはすごく斬新で良かったので、これからも番宣ゲストが来たら、反町さんと対談させてほしいです。
そうですね。うちの番組としても、意外性を出していきたいですね(笑)