『人殺しの息子と呼ばれて…』続編の制作は…
張江氏は、息子へのインタビューを放送することで、批判が集まることも懸念したそうだが、「結果として、あの番組をたくさんの方が見てくださって、彼を応援するという空気になっていったのは、本人も『報われる』と言っていましたけど、ありがたかったです。本当に皆さんの支え合っての彼(息子)だなって思います」と感謝。
会場からは、松永死刑囚の刑が執行された際、続編の制作を考えているかという質問があったが、「こういう形で息子と知り合ったので、その成長というのをできる限り見届けていかないといけないなと思っているので、その時が来たらまた考えようという話は、実は本人ともしています」と明かした。
そして、このトークショーの観客に向け、息子からLINEで送られてきたメッセージが読み上げられた。
「会場の皆さん、暑い中、足を運んでいただきまして、本当にうれしく思います。本当にありがとうございます。これから僕は、みんなに与えてもらった勇気と、きっかけを生かして、僕にできることを活動していきたいです。これからも僕たちを見守ってください」
もがき苦しむ人から見えてくるものがある
『人殺しの息子と呼ばれて…』の視聴率は、日曜昼帯にもかかわらず、「前編」(昨年10月15日)が6.3%、「後編」(同22日)は10.0%を記録。『ザ・ノンフィクション』は、直近の5回連続で6%を超えるなど、多くの支持を受けている(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。
この背景について、張江氏は「皆さんが“本物”を求めているという気がしていて、ひょっとしたらそんなニーズにちょっとは応えられているのかな」と分析。「僕が前にいたNHKのドキュメンタリーは、自分たちがやりたいことをやるわけですね。ところが民間放送だと、テレビの向こう側に誰が座ってるかということを、ものすごく敏感に感じて、例えば50代の女性だったらどういうテーマなら見てくださるのか、そこから今の世の中が見えてくることがないかというのは、相当考えていますね」と、テーマ設定の裏側を紹介した。
また、著名人でなく、市井の人たちを追うドキュメンタリー番組として唯一の存在となっていることについては「SNSでは『頑張っていない人を追いかける』とか『関東一暗い番組だ』とか言われるんですけど、もがき苦しんでる人たちから見えてくる今の世の中とか、その人の人生というのは、ものすごく深いものがあると思うので、そこはずっと追いかけていこうかなと思っています」と明言している。
イベントの最後には、『ザ・ノンフィクション』のエンディングで流れるテーマ曲「サンサーラ」を歌う宮田悟志が登壇し、同曲をアカペラで披露。会場を一気に日曜15時前の雰囲気に包み込み、トークショーは幕を下ろした。
エンディングを歌うアーティストは、現在の宮田が6代目。当初は6月で別のアーティストに交代予定だったが、好評を受けて、7月以降も引き続き担当している。
『ザ・ノンフィクション』では、7月29日・8月5日の2週にわたり、テレビ史上初めて、ロックンローラー・内田裕也(78歳)に密着する『転がる魂 内田裕也』を放送。ナレーションは、妻の女優・樹木希林が担当する。密着したのは、映画監督の崔洋一氏で、張江氏は「崔監督にしかできない異色の番組に仕上がっているので、ぜひご覧いただきたいです」と話している。