空前のウイスキーブームが続いています。
今やすっかり市民権を得たウイスキーのソーダ水割り「ハイボール」。職場の飲み会で、見かけないことはないと言っても過言ではないのではないでしょうか。かつては年配の男性が飲むお酒というイメージがありましたが、今では若い女性も気軽に楽しんでいますよね。
今回はそんなウイスキーについてのお話を、サントリーウイスキー部の佐々木太一さんに教えていただきました。
ちなみに、佐々木さんはバレーボールの元日本代表という経歴をお持ちのスゴイ人で、現在はウイスキーを伝導するアンバサダーとして活躍している人物。なんとウイスキーの資格でも最難関とされるマスター・オブ・ウイスキーの有資格者でもあるのです。
さあ、奥深いウイスキーの扉を開けてみましょう!
■ウイスキーの魅力って? どうしてこんなに人気なの?
――今、ウイスキーが大人気です。ウイスキーの魅力とは何でしょうか。
佐々木:まず、楽しみ方の幅が広いことです。バーや自宅ならストレートやロックでゆっくりと楽しみ、飲み会ではハイボールにしてわいわい楽しむ。飲むシチュエーションの幅がこれほど広いお酒は他にありません。さらに料理にあわせやすいのも魅力ですね。
――たしかに楽しみ方が多彩ですよね。本日はそんなウイスキーについて教えてください。ウイスキーとはそもそもどんなお酒なのでしょう。
佐々木:お酒には醸造酒と蒸溜酒という種類があります。原料をアルコール発酵させたお酒、たとえばワインやビールは醸造酒です。蒸溜酒は、それをさらに蒸溜させたお酒のこと。穀類を原料として醸造し、それを蒸溜・熟成することでウイスキーになります。ちなみにビールは麦芽を醸造したお酒ですから、ウイスキーはビールを蒸溜・熟成させたお酒ともいえます。
――ウイスキーにはどんな種類があるのでしょう。
佐々木:もっとも大きな分類は原料による違いですね。大麦麦芽を原料とするウイスキーをモルトウイスキーといいます。そして、トウモロコシやライ麦などを主原料にするとグレーン・ウイスキー。その二つを混ぜたものがブレンデッド・ウイスキーです。現在、世界のウイスキーの多くはこのブレンデッド・ウイスキーです。
ブレンドによって味をコントロールできるので、商品として幅を出しやすいんですよね。たとえば「角」や「響」などがブレンデッド・ウイスキーですね。
――ウイスキーに詳しくなくても、モルト・ウイスキーという言葉を耳にしたことのある人は多そうです。そういえばシングルモルトウイスキーというものもありますよね。
佐々木:シングルモルトウイスキーは"一つの蒸溜所で作ったモルトウイスキー"のことです。よく"一つの樽から作ったウイスキー"だと勘違いされている方がいますが、一つの樽で作ったウイスキーはシングルカスクという別の呼び方があるんですよ。
さらにシングルカスクに加水をせず作る樽出し原酒をカスクストレングスと呼び、冷却ろ過をせずに作るものをノンチルフィルタード、略してノンチルと呼びます。
――製法によってかなり細かく呼び方があるんですね。
佐々木:慣れてくるとバーなどで「何かノンチルカスクありますか?」みたいに聞けるようになりますよ。
――そんなふうに言ってみたいものです(笑)。やはり味も香りもかなり違うのですよね?
佐々木:ブレンデッドよりシングルモルト、シングルモルトからその中でもノンチルカスクといくにつれて、どんどん個性は強くなっていきますね。
――ウイスキーには、世界中に有名なものがありますよね。
佐々木:世界には以下のように「五大ウイスキー」と呼ばれるものがあります。
・スコッチ(スコットランド)
・アイリッシュ(アイルランド)
・アメリカン(アメリカ)
・カナディアン(カナダ)
・ジャパニーズ(日本)
ジャパニーズはスコッチを踏襲していますが、アメリカンやカナディアンになると原料からして違うので、味わいも違います。
――ちなみにバーボンは?
佐々木:アメリカン・ウイスキーの一種ですね。トウモロコシやライ麦で作るウイスキーで、内側を焼いて焦がしたアメリカンホワイトオークの新樽で熟成させるのが特長です。ウイスキーはバーボンに限らず「樽」が重要なんですよ。
――樽によっても違いが出るのでしょうか。
佐々木:ええ。たとえばシェリー樽なら芳醇で甘い香りがつきます。国産のミズナラを使った樽もあり、ミズナラカスクなどはかなり貴重品です。
――本当に奥が深いですね。初心者がウイスキーの世界に入っていくなら、どのあたりからがおすすめですか?
佐々木:やはりブレンデッドでしょう。コストパフォーマンスがよく、すべてのバランスが取れているのは「角」。そこからウイスキーに興味を持ったら、次は「バランタイン」や「ティーチャーズ」など世界のブレンデッド・ウイスキーを飲んでみることをおすすめします。
ブレンデッドの次はシングルモルトに入っていくと、より奥深いウイスキーの世界が味わえます。ブレンデッドに比べてシングルモルトは個性が強く、蒸溜所によってもがらりと変わります。
ピート香にもぜひ注目してほしいです。ピートとは燻製のような香りのことで、スコッチだとアイラ島のものが有名です。私もピート香が大好きでよく飲んでいます。
――料理との合わせ方にも何かポイントがありますか?
佐々木:似た要素を合わせていくのが基本ですね。ナッツとチョコレートは、ウイスキー全般にと相性がいいです。いずれもウイスキーの香りや風味に共通する要素だからです。
また、ビーフジャーキーや牡蠣などの海産物には、「ボウモア」などの塩気を感じるウイスキーがオススメですし、燻製には、ピートが効いているウイスキーが合いますね。
「マッカラン」は甘い香りがあるので、デザートと合わせて楽しめます。ハーゲンダッツのクッキー&クリームなんか最高ですよ。
「グレーン・ウイスキー」だと香りの奥に出汁のような風味があるので和食も合います。煮付けやだし巻き卵などがいいですね。ライトなグレーン・ウイスキーである知多とおでんとの相性は抜群です。
そして油ものでしたら、やはりハイボール! 油をさらっと流してくれます。
――ハイボール、万能ですよね。
佐々木:実はハイボールをおいしく作るコツがあるんですよ。
――えっ、ぜひ教えてください!
佐々木:では、実際に作りながらご説明しましょう。