「言いたいことが相手に伝わらない」など、課題を感じる社会人が多いプレゼンテーション。そこで、同じ悩みをもつ広告代理店の営業・Mさんを相手にプレゼンの誌上レッスンを開催した。
前編では、自身のプレゼン課題を認識し、後編では、その課題を克服するトレーニングに取り組んでいく。今日からでもすぐに使えるので要チェックだ。
低音ボイスを出す訓練
「Mさんの特長である低音ボイス。これをさらに説得力のあるダンディーな声にするための発声トレーニングを行います。頑張りましょう!」
「まずは、ヘソから9cm下のところにある丹田(たんでん)という場所をつねに張っている状態にして! 10秒経ったら息を吐いてください」
「こうですか、はー」
「いいですよ。いいですよ。理想をいえば太い筒をイメージして吐いてください。はい、もう一度。息を吸って、おへそに意識を集中して、肩やのどには力を入れず、手もぶらぶらしたまま。息を留めてください。口は開けっ放しで、そこから息を一気に吐ききってください」
はー
Mさんはこのトレーニングをカラダが覚えるまで、繰り返す。傍からみていると、本当に効果があるのか? と疑問がわいてくる。
「では、さらにおへそに意識を集中させるために、誰かげんこつで下腹部を押してあげてください」と、こちらの疑念を感じ取ったかのような一言。
虎は常に周囲の状況を把握している。そして、筆者が急きょ駆り出されることに。
ここかな。これぐらいかな。
「中途半端な押し方ではなく、腰を入れて押してください」と、コーチに叱られる。
「はい」と気合いを入れ直し、強く押す。おっ、堅い! 堅い!
中年男性が、相手の腹をコブシで押している状況はなかなか見ないだろう。
続いて、プレゼンの導入部分を練習する。
「みなさん、こんにちは、わたくし、Mでございます」
「みなさん、こんにちは、わたくし、Mでございます」
「みなさん、こんにちは、わたくし、Mでございます」
Mさんは、何度も何度も繰り返し行うが、ついつい早口になるようで、「もっとゆっくり。もっと」とコーチから都度指摘が入る。下腹部に力を入れながら話をする、なれない状態にあるので話すことに意識が集中できないのだろう。
この早口を改善するために、次に行われたのが「悪代官スペシャル」というトレーニング。時代劇でお約束、誰もが知るだろう「あの場面」の再現だ。
越後屋は饅頭がぎっしり詰まった折り箱を悪代官に差し出す。
「好物のおまんじゅうでございます」
そして、そのとき放たれる
「ふ・ふ・ふ・ふーん。越後屋、おぬしも悪よのうー」を練習。
この台詞をトレーニングに使うとは! 天才では!?
永井コーチが自ら実演。音大出身ということもあり、声量と力強さのレベルが違う。Mさんは悪代官になり切れるか?
呼吸が大変で、涙目になりながらも、「おぬしも、わるよのーう」と耐えて頑張る、Mさん。
しかし、「もっと、ゆっくり。もっと、感情を込めて」。虎の牙は容赦なく襲い掛かる。
「俺は悪代官、悪代官なんだ」と自己暗示をかけるMさん。彼を選んだのは正解だった。たぶん。