5月9日に発表されるや否や、Twitterでもトレンド入りをした「富士急ハイランド入園無料化」が、7月14日より実現される。このタイミングで変わるのは入園料だけではなく、それぞれのアトラクションや年間フリーパスの料金変更、そして、アトラクションの新設・リニューアルも行われる。実際、「富士急ハイランド」(山梨県富士吉田市)はどこに向かっているのか。
遊園地から"富士山観光のハブ"へ
入園無料化(大人(中学生以上)1,500円/小人(3歳~小学生)900円が無料)に先立って開催された発表会にて富士急行代表取締役社長の堀内光一郎氏は、「昭和36(1961)年に富士急ハイランドを開業して以来、入園無料化は初めてのことになりますが、私共としては単に入園無料化にするだけではなく、今までの富士急ハイランドを遊園地という枠組みからこの地域を代表するような富士山のアミューズメントエリアに、成長・進化させるための第一歩と考えています」と語る。
堀内氏によると、富士北麓には年間1,500万人が訪れているものの、多くは富士登山や富士五湖、忍野八海、芝桜等のワンポイントだけを訪れ、次の目的地に向かう傾向があり、富士山周辺を巡りながら様々な魅力を深く広く長く味わうという旅には達していないのが現状だという。その中で、富士急ハイランドを入園無料化にし、誰でも気軽に訪れることができる"富士山観光のハブ"として機能させることで、新しい旅の形を生み出すことを狙っている。
富士山エリアを回遊するためには、交通手段の充実化は欠かせない。周辺の駅やホテルを巡回する無料バスを増強するほか、新たなに世界最大級の自転車シェアリングサービス「モバイク」に協力し駐輪スペースを提供。
「モバイク」は富士急ハイランドや、7月20日に開業するアウトドアリゾート「PICA Fujiyama」(山梨県富士河口湖町)等の富士山周辺施設の前に計1,000台設置されている。120円/30分という手軽な価格設定なので、スポットからスポットへ、専門駐輪場(サイクルポート)に乗り捨てしながら富士山観光を楽しめる。
絶叫が苦手な人も富士急ハイランドへ
もちろん、富士急ハイランドとしても狙いがある。富士急ハイランドは現在、大学生を含んだ20代がメインユーザーとなっているが、入園無料化に踏み切ることで、地元民やインバウンドを含めた幅広い年代の客の囲い込みを目指している。さらに、「絶叫が苦手な人にも楽しんでほしい」と堀内氏が語るように、いい意味でイメージを裏切る、"富士急ハイランドを発見する機会"にもつながるだろう。
園内には、最高速度130km/h・最大落差70mという世界最高クラスのスペックを有する絶叫コースター「FUJIYAMA」や、リニューアルを繰り返しながら感覚に訴えかけるホラーハウス「絶凶・戦慄迷宮」など、"絶叫と恐怖の富士急"を思わすアトラクションが多数存在している。その意味では、絶叫が苦手な人にとって富士急ハイランドへ足を向けづらいのは事実だろう。
しかしその一方で、2018年に20周年を迎えたファミリーで楽しめる「トーマスランド」や、富士急ハイランド前に広がるプチフランスな「リサとガスパール タウン」など、"愛と慈しみの富士急"という面も持ち合わせている。
入園無料化によって「富士観光のついでに立ち寄ってみよう」という選択が容易になるのはもちろん、"絶叫と恐怖の富士急"というイメージが強い人にも、富士急ハイランドをより身近な存在に感じさせることができる。それで実際に訪れ、"愛と慈しみの富士急"に触れることで、その人にとっての新たな富士急ハイランドの楽しみ方が見えてくることだろう。
日本初のスタバが富士急への呼び水に
また、7月20日に開業する国内では初の遊園地内「スターバックス コーヒー 富士急ハイランド店」も、新しい富士急ハイランドを象徴する存在だ。富士急ハイランドの入り口側にあるため立ち寄りやすく、小休止しながらアトラクションを眺め、「どうせならちょっと乗ってみようか」という展開にもなりやすいだろう。うまいことに、ショップの目の前には「FUJIYAMA」が滑走する。
「COFFEE BREAK」をデザインコンセプトとした店内には、コーヒー農園の葉や果実をモチーフにしたアートを飾り、にぎやかな園内でホッとできるひとときを提供する。三方ガラス張りの開放的な空間で、室内のみならず屋外にもベンチを設けている。天井や壁面に地元・山梨県産の杉材を用いることで、その土地ならではの魅力をショップにも反映している。
スターバックスの広報によると、今後、遊園地内での展開を強化するというわけではなく、山梨県内で人の集うエリアへの新規展開を検討している際に富士急ハイランドからの打診を受け、今回の初出店になったという。特に富士急ハイランド店限定商品は設けていないものの、富士山がデザインされた山梨・静岡限定「ハンディステンレスボトル富士山」(税別4,300円)はお土産にも良さそうだ。
実は年パスも大幅値下げ
入園無料化と共に、値上げ・値下げになるものがある。大きなところで言うと、まず、それぞれのアトラクションの強みをさらに伸ばすという意味で、各アトラクションの価格を値上げする。「FUJIYAMA」「ド・ドドンパ」「高飛車」「ええじゃないか」は1,000円→通常1,500円/繁忙期(8月11~19日)2,000円など、全体的に200~700円アップする。
フリーパス対象外の「絶凶・戦慄迷宮」は、ひとり単位から1組(最大4人)単に切り替えて販売すると共に、フリーパスの有無で値段が変わる。ひとり1,000円→1組通常4,000円/1組繁忙期6,000円(フリーパス購入)、または、通常1組6,000円/繁忙期1組8,000円(フリーパス未購入)となる。なお、「絶凶・戦慄迷宮」のチケットは時間帯指定であり、園内の券売機にて購入となる。
フリーパス(大人5,700円)は据え置きだが、65歳以上が対象のシニアパス(3,000円)は廃止になり、午後からの入園で使えるアフターヌーンパスは大人3,000円→3,300円/3,600円(閉館時間によって価格が異なる)と値上げする。また、「トーマスランド」は幼児乗車可能アトラクションの充実化に伴い、3歳から有料→1歳から有料に切り替える。
一方、年間フリーパスは大幅に値下げとなる。大人5万円→1万7,100円/中人(12~17歳)4万5,000円→1万5,600円、小人(7~11歳)3万7,000円→1万2,900円と、全体的に年3回行けば元が取れる。また、従来はなかった幼児(1歳以上)とシニア(65歳以上)も年間フリーパスを新設(各6,000円)する。
フリーパスの料金は変わらないとしても、気になるのは、入園無料化に伴う入園者増での混雑だろう。富士急ハイランドでは、人気アトラクションをほぼ待ち時間なし(最大でも30分程度)で利用できる「絶叫優先券」を別途設定している。対象施設は、「FUJIYAMA」「ええじゃないか」「高飛車」「ド・ドドンパ」「テンテコマイ」「鉄骨番長」「ナガシマスカ」「絶望要塞」「富士飛行社」の9つのアトラクションであり、1アトラクションに付き1回で9枚まで購入可能。料金は据え置きの1枚通常1,200円となる(日によって料金変動あり、WEBで事前購入可能)。
今回の変化は料金設定だけではない。入園方法も一新し、新しい富士急ハイランドが待っている。続いてはそんな富士急ハイランドの中を紹介する。
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