シュ取締役専務は、レノボ側の人物として、交渉段階から、この協業に参加していたという。だが、2018年5月以降、FCCLの経営陣の一人として社内に入り、いくつかの点に気がついたという。
ひとつは、原理原則に則り、プロセスを守りながら、ビジネスを行うという点。2つめには日本を中心とした考え方でビジネスを行っている点。そして、3つめには、社員同士の信頼の水準が高く、それによって物事の決定が迅速に進んでいるという点だ。
「FCCLが持つこれらの特徴は、さらに成長できるものもあれば、改善できる余地を持っているものもある。たとえば、グローバルの視点をもっと取り入れるといったことも可能だろう。だが、FCCLにとって、いまパフォーマンスが出せている部分であれば、それを変えるつもりはない。FCCLが持つ文化を尊重し、それをプラスにしていくことに力を注ぎたい」とする。
日本でレノボグループの存在感を発揮できる
一方で、レノボ出身の立場から、今回の富士通とのジョイントベンチャーのメリットを次のように語る。
「ひとつは、PC産業として重要な市場である日本で、レノボグループの存在感を発揮できる点」をあげる。
「日本のユーザーは、付加価値を持ったPCに対する関心が高い。PCの平均単価が高く、利益率も高い。ここにアドレスできる強い製品とブランドを持つことができる」とする。
そして、2つめの要素として、「富士通とのパートナーシップをさらに強めることができる点」をあげる。
「富士通は、PC以外の領域にも緊密な顧客接点を持つ、世界的に優れたソリューションベンダーである。ソリューションのケーパビリティ、幅広いデバイスを持っていること、欧米市場をはじめとする世界各国での実績などを持つ富士通とは、様々な領域での協業成果が見込まれる。PCは第一歩の協業であり、レノボと富士通とのコラボレーションには、私自身、これからも期待している」と語る。
レノボが描くFCCLの未来はどんなものか
では、シュ取締役専務が描く、FCCLの「Day 1000」の姿とはどんなものなのだろうか。
「PC市場そのものが成長市場ではないこと、FCCLの事業規模に比較すると、R&Dや調達、管理コストが構造的に大きくなること、日本の限られた市場でビジネスを行っているニッチなプレーヤーであることは課題と捉える必要がある」としながらも、「課題とチャンスは表裏一体ともいえる。成長領域ではない市場において、次にどんな波が来るのか。クラウドやIoTが鍵になるとは言われるものの、現時点では明確な答えがあるわけではない。業界全体に課せられたテーマであり、FCCLは、レノボグループの力を活用しながら、その領域に挑戦することができる」とする。
シュ取締役専務は、FCCL入りしてから、家族と一緒に日本に住むことになった。シュ取締役専務が日本に住むのは、今回が生まれて初めてだ。腰を据えて、FCCLの成長に取り組む姿勢をみせる。
「Day 1000のときには、PCビジネスを新たな形にトランスフォーメーションし、継続的に利益を得る仕組みを確立したい。そして、ポストPCについても、サービスやソリューションと組み合わせるなど、新たな領域に舵を切っていきたい。いまから見れば、それらは不確実な領域に見えるかもしれない。だが、確かな利益を得ることができ、成長につげることができる新たなモノに挑戦したい」とする。
FCCLとレノボとの協業の成果を最大化し、FCCLが新たなものに挑戦し、変化する上で、シュ取締役専務の役割は重要になる。