富士通クライアントコンピューティング(FCCL)に、レノボグループからの唯一の常勤取締役としてボードメンバーに参画しているのが、フェリックス・シュ取締役専務だ。

マッキンゼーでコンサルタントとしてキャリアをスタートしたシュ氏は、中国のコングリマリッドであるチャイナリソーシズ、オーストラリア最大の通信会社であるテルストラを経て、レノボグループに入社。アジアパシフィック部門を担当し、コーポレート部門を統括するチーフ・オブ・スタッフや、経営戦略を担うヘッド・オブ・ストラテジーなどの要職を歴任してきた。本社部門とのパイプが強く、レノボ本社とのつなぎ役として、FCCL経営幹部の期待も大きい。

  • レノボグループからの唯一の常勤取締役、フェリックス・シュ取締役専務

■新生・富士通クライアントコンピューティングの挑戦
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レノボからの常勤取締役は一人。「FCCLの独立性を維持」

実際、FCCLは、営業・マーケティング部門であるアジアパシフィックチームとのパイプが強い一方で、組織上、レノボ本社のR&D部門や調達部門とのつながりが薄い傾向がある。だが、シュ取締役専務の人脈を生かすことで、これらの部門との強力なつながりが実現できる。

「レノボのR&D部門や調達部門との連携を図ったり、FCCLの10倍以上のスケールでPCビジネスを行うレノボの知見、ノウハウを活用したりといったことに、私のこれまでの経験を生かすことができる」と、シュ取締役専務も語る。

実際、一度つないだパイプを、FCCLの社員が積極的に活用する様子に驚いたともいう。「すでに、開発部門では、本社のR&D部門と、自発的にコミュニケーションを行うケースが見られており、また、調達部門では、インテル、マイクロソフト、ウェスタンデジタルといった主要企業との取引において、コスト削減のメリットが生まれている」とする。

また、社内人事システムなどは、現時点では、富士通のものを引き続き利用している段階にあるが、これもPCメーカー専業として成長してきたレノボの仕組みや考え方を利用することで、より最適化したバックエンドシステムの活用につなげることもできるだろう。ここでも、本社の管理部門との連携という点で、シュ取締役専務が持つ人脈を生かすことができる。

「レノボから常勤取締役が、私一人であるということからも、FCCLの独立性を維持することを前提としていることがわかってもらえるだろう。そして、FCCLが、将来に向かって、持続性を維持するためにも、アジアパシフィック部門だけでなく、本社R&D部門、調達部門、管理部門との緊密な連携を取る必要がある。そこに私の役割がある」(シュ取締役専務)。

ゲーミングPCでは別ブランドの検討も?

シュ取締役専務の存在は、レノボ傘下になったメリットを生かすという点で、FCCLには重要であることがわかる。さらに、シュ取締役専務の様々な業界に関わってきた経験を、FCCLのなかに生かすことも可能だろう。

「FCCLが、これまで競合と見ていたのは業界内の企業。だが、もっと広い見方をしていく必要がある。マーケティング手法やブランディング手法など、他の業界での事例を参考にすることも必要だ」とする。

例えば、これまでFCCLにはなかったゲーミングPCの製品化を、今後、検討する可能性が出てきた場合に、「ここに新たなブランドを用意するかといった視点での検討も行いたい」と、シュ取締役専務は語る。