ここからようやく本題に入る。現在、Intelが公表している、あるいは発表会などで触れられたことのあるメインストリームの「Lake」についてまとめていこう。
Kaby Lake Refresh - 「U」のみ
第8世代Coreとして最初に登場したのがKaby Lake Refresh(Kaby Lake-R、KBL-R)だ。前述したとおりUシリーズのみラインナップされている。第8世代とされてはいるが、製造プロセスはKaby Lakeと同じ14nm+で、マイクロアーキテクチャも同じ。コア数が従来の2コア/4スレッドから4コア/8スレッドに強化された。
このKaby Lake Refreshは急遽浮上したコードネームだったため、驚いた人も多かっただろう。後で紹介するCannon Lake U、10nmプロセス採用Uシリーズ製品のスケジュールが遅れたため、その間を埋めるワンポイントリリーフ的な存在だ。執筆時点では、これに続くCoffee Lake-Uが登場している。
Coffee Lake - 「S」「H」「U」
次に登場したのがCoffee Lake。こちらはさらに最適化が進んだ14nm++プロセスを採用している。ここでいう最適化とは、同じ14nmプロセスでも消費電力を抑えられたり、パフォーマンス(動作クロック)を引き上げられたりといったことを指す。Intelの資料によれば、14nm++のほうが初代10nmよりもトランジスタ1個あたりの性能で上回るという。
14nm++ではそれまでの14nm+までがTDP枠内で4コア止まりだったところ、SシリーズとHシリーズで6コア化を果たした。クロックも引き上げられており、コア増加と合わせて確かにパフォーマンスが向上した。ただ、TDPも91Wから95Wへと微増しているため、プロセスレベルでの評価はわかりづらい。
なお、Uシリーズは先のKaby Lake Refresh Uで4コア化されたが、Coffee Lake Uも引き続き4コアを維持する。その代わり、Coffee Lake UではKaby Lake Refresh Uよりもクロックを向上、統合GPUもIntel UHD GraphicsではなくIntel Iris Plus Graphicsへとグレードアップ、PCI Expressの最大レーン数がそれまでの12から16レーンに引き上げられている。一方でTDPは最大28Wまで上がっている。
Coffee Lake UシリーズのTDPはややこしい。例えばKaby Lake Refresh UのTDPは15WだがコンフィグラブルTDPのupが25W、downが10W。これがCoffee Lake Uではupが28W、downが20Wとdownで大きな差がある。
冷却機構の進化、CPU以外の省電力化によってスリムノートブックPCへ搭載しても大きな問題はないと思われるが、こうもスペックやTDPが違うとプロセスレベルでの進化が見えにくい。
Cannon Lake - 現状は「U」1製品のみ、「S」「Y」は未リリース
そして、Cannon Lakeは現状Core i3-8121Uだけのリリースに留まる。Cannon Lakeは10nmプロセス世代としては最初の製品で、本来なら「第9世代」と呼ばれていただろう。しかしスペックシートでは、第8世代と記載されている。さらにプロセッサ一覧にある第8世代Core i3のリストに表示されず、Core i3-8121Uを直接検索することで仕様が見られるという不遇な扱いにある。ここに10nmの苦境が伺える。
スペックも特殊で、2コア4スレッドであるのはCore i3だからわかるが、統合GPUを搭載していない(おそらくDisabledにした状態で出荷されている)ためディスクリートGPUとの組み合わせが必須となる。
AVX-512に対応していたり、メモリのサポートでLPDDR4が追加された一方、LPDDR3が切り捨てられていたり、Tjunction(コア温度)が100℃から105℃へと引き上げられていたりする。ほかの10nm製品でもこのあたりの特徴を備えているのだろうか。
SシリーズとYシリーズについては、現時点でコードネーム一覧には掲載があるもののリリースされていない。スペックもわからない。そもそもUシリーズがCore i3-8121Uのみの1製品という状況で、S/Yシリーズがリリースされるのかも怪しい。スキップされる可能性が高いだろう。
というのも、IntelのMurthy Renduchintala氏が対談で10nm製品をしばらく投入しないと明かしたからだ。データセンター向けには2018年2019年と14nmで製品を展開する。それ以外の製品についても、「12~18カ月かけて10nmプロセス製品のコストと歩留まりを改善する」としたうえで「その間は14nmプロセス製品を予定する」という。
10nm製品の穴を埋める製品として「Coffee Lake Refresh」「Whiskey Lake」「Amber Lake」、さらに「Comet Lake」というコードネームが追加された。
Coffee Lake Refresh 「S」「H」
さて、ここからがまだリリースされていない製品となる。Coffee Lake Refreshは、2018年後半に投入されると噂されているが、コードネーム一覧上には存在しない。10nm製品が出るまでの穴を埋めるものとすれば、Sシリーズ、Hシリーズとなるはずだ。
オリジナルのCoffee Lake同様、14nm++プロセスと思われるが、Coffee Lake Refreshは最大8コアに増強するとの噂がある。ライバルのRyzen 7が8コアで先行しているため、その対抗ともいえるだろう。
また、Coffee Lakeは2017年Q4にリリースされているので、およそ1年が経過し、刷新するタイミングとしてもちょうどよいといえる。Haswell世代のHaswell対Haswell Refreshはクロックを引き上げた程度だったので、Coffee Lake Refreshでコアが増えるとすれば、Haswell世代よりは大きなアップデートといえるかもしれない。
Whiskey Lake 「U」
Whiskey LakeはUシリーズに予定されている製品だ。製造プロセスは14nm++。Coffee Lakeと何が違うのか、Coffee Lake RefreshのUシリーズとしてではなく、なぜWhiskey Lakeとしたのか、そのあたりはわからない。何か理由があると信じたいが、単にリリース時期やマーケティング上でのことかもしれない。
Amber Lake 「Y」
Amber LakeはYシリーズに予定されている製品だ。これも製造プロセスは14nm++となる。このAmber Lakeも、先のWhiskey Lake同様、なぜCoffee Lake Refreshに含まれないのか謎だ。まあ、Yシリーズに関しては第7世代のKaby Lakeからアップデートされていないので、Amber Lakeでようやく第8世代に更新されるという意味では価値があるだろう。合わせてTDPがそれまでのYシリーズの4.5Wから5Wへと引き上げられるため、相応のパフォーマンス向上があると予測される。
Comet Lake 「U」
Comet LakeはUシリーズで、2019年に投入されるといわれている製品だが、現在のコードネーム一覧には掲載されていない。ただし、Uシリーズもこれまでおよそ1年間隔で更新されているため、2018年をWhiskey Lakeが担うとなれば、2019年は何が担うのかということになる。それがComet Lakeだろう。
2019年にIce Lakeが立ち上がったとしても、UシリーズはSやHシリーズよりも後になるかもしれない。Comet Lakeも14nm++での製造が予想されるので、Whiskey Lakeと何が違うのかといったところに注目される。
Ice Lake 「S」「H」「U」「Y」
Ice Lakeは、Cannon Lakeに続く2番目の10nmプロセス製品となるはずで、現在再設計が進められているという話だ。現時点でのロードマップではS/H/U/Yすべてが掲載されており、これが無事立ち上がれば、Kaby Lake以来のフルラインナップになるはずだ。
10nmプロセスの採用に加えて、マイクロアーキテクチャの刷新により、大きな飛躍が期待されるが、スケジュールについてはまったくわからない。先の12~18カ月という発言から予想すれば、早くて2019年半ば、遅ければ2020年にずれ込むと思われる。また、マーケティングの観点から変更される可能性はあるものの、順当ならIce Lakeあたりで第9世代Coreを名乗るだろう。
Tiger Lake
Tiger LakeについてわかっているのはIce Lakeの次の10nmということくらい。S/H/U/Yシリーズのどれが対象となるのかも現時点では非公開だ。Ice Lakeの次となれば早くとも2020年になるのではないだろうか。第9世代なのか第10世代なのか、そのあたりもまったくわからない。
現在のメインストリーム・プラットフォームの「Lake」ロードマップは以上のとおりだ。Ice LakeとTiger Lakeを含め、未リリースの6つの「Lake」が存在することになる。冒頭にも書いたが、複数のプロセスやマイクロアーキテクチャにまたかって「Lake」があるのでわかりにくい。ひとまず、Kaby Lake Refresh以降の「Lake」にまとめたのが以下の表だ。