COMPUTEX TAIPEI 2018を経て、ますます混沌としてきたIntelのCPUロードマップ。なんとか14nmを立ち上げ、Skylake、Kaby Lake、Coffee Lakeと登場し、次はいよいよIce Lakeを待つばかりだったわけだが、今度は10nmプロセスの立ち上げに苦しみ、スケジュールに遅れが生じている。その結果、当初は予定してなかったLake(湖)が、中継ぎとして氷河湖のごとく次々に生まれている。
Intel CPUでは、Sandy Bridge/Ivy Bridge、Haswell/Broadwellといったようにコードネームの末尾がアーキテクチャと結びついた時期があったが「Lake」ではそうなっていない。
Kaby Lake/Kaby Lake Refresh/Coffee Lake/Cannon Lakeは、Skylake系のマイクロアーキテクチャを採用するため末尾に「Lake」が付くのはわかるが、マイクロアーキテクチャが刷新される(予定の)Ice Lake以降も「Lake」のままである。Coreプロセッサだけではなく、Atom系でもApollo LakeやGemini Lakeといった「Lake」が登場したことも混乱の要因になっている。
CPU好きの人ならこうした複雑なロードマップやコードネームのあれこれを楽しめるかもしれないが、それにしてもちょっと「Lake」が多すぎないだろうか。このあたりで整理してみよう。
ただし、ここでまとめるのは、現行世代から現在ロードマップで浮上しているメインストリーム向けプロセッサとする。Atom系のプロセッサやCore-X系のプロセッサの「Lake」はいったんわきに置こう。ちなみにIntelのコードネーム一覧ページで「Lake」を検索すると20製品も出てくる。
未来の情報も含まれるため、それが本当に登場するのかは不確定だ。スケジュール遅れでは済まずに、製品ごとスキップされることもある。また、今後どのタイミングで第8世代から第9世代へと交代するのか、マーケティング的な観点からアーキテクチャに大きな変更が入る前に第9世代を名乗る可能性も捨てきれない。ここでは現状考え得る範囲での予想として進めることにする。
「S」「H」「U」「Y」ってなんだ?
ここのところ、Coffee Lake-SやKaby Lake Refresh Uといったように、コードネームの後ろに「S」「H」「U」「Y」といったアルファベット付きで製品が紹介されることが多い。これが何を意味するのか理解しないとこの先の説明がわかりにくくなる。コードネームの前に、このアルファベット群について説明しておこう。
・「S」シリーズ:デスクトップ向け
「S」シリーズはいわゆるデスクトップ向けCPUである。TDPレンジは95~35Wで、LGAソケットが用いられる。最近ではハイパフォーマンスノートにも搭載される例があるので、デスクトップPCユーザーのほかにゲーミングノート、モバイルワークステーションユーザーもこの「S」シリーズに注目しておくとよい。
グレードによってコア数が異なるが、Coffee Lake世代のCore i7では6コアとなる。それ以前は長らく4コア止まりだったので、Coffee Lakeでコア数を増やしたことはパフォーマンス面で大きな転機となった。
ちなみに、モバイルでTDP 65Wの「B」シリーズが追加されているが、おそらく「S」シリーズをハイパフォーマンスノートに搭載する動きを見て「ノートにはBGAを使ったほうが設計しやすいだろう」と「S」シリーズをベースにBGA化したのではないかと思われる。
・「H」シリーズ:ハイパフォーマンスモバイル向け
「H」シリーズはハイパフォーマンスモバイル向けCPUだ。TDPは45W前後となる。TDPレンジ的にデスクトップ向けの「S」シリーズに近いが、こちらはBGAパッケージが採用される。主にゲーミングノート、モバイルワークステーションといった高いパフォーマンスが求められる製品に搭載される。
こちらもこれまで4コアモデルがラインナップされていたが、Coffee Lake世代で最大6コア実装のモデルが登場した。ちなみに、Kaby Lake Gという4コア/8スレッドCPUにRadeon RX Vega M GPUを組み合わせたモデルが存在するが、そのTDPが100W/65Wとなっており、GPUのTDPを考慮するとCPU側はTDP 45WのKaby Lake Hあたりがベースではないかと思われる。
・「U」シリーズ:スリムノート向け
「U」シリーズはスリムノート向けCPUだ。TDPは28~15W前後となり、冷却機構もより小型薄型に実装できる。薄型のクラムシェルモバイルや2in1モバイルあたりに用いられるので、モバイラーはこの「U」シリーズに注目するとよい。ここはこれまでデュアルコア(2コア)の製品だったが、Kaby Lake Refresh、Coffee Lake世代から最大4コアになった。
・「Y」シリーズ:タブレットや薄型2in1向け
最後の「Y」シリーズは、主にタブレットや、より薄さを追求した2in1モデルで採用されるCPU。TDPは4.5Wで、モビリティを重視する。「Core i」ファミリーではなくいわゆる「Core m」ファミリーとして扱われる。現在第7世代、Kaby Lakeが最新で、デュアルコア止まりである。
以上をまとめたものが下の表になる。それぞれのコードネームに、用途別にS/H/U/Yといったシリーズがある。第6世代、第7世代では1つのコードネームに対して4種すべてが提供されてきたが、第8世代以降はこれが崩れる。製品によってはUのみ、Yのみといったものもあるので、注意したい。