「プロの道具」としての条件
日本および欧州の森林組合を訪ねたり、実際にジムニーを使っているハンターに話を聞いたりして、スズキが開発を進めた「プロの道具」である新型ジムニー。過酷な使い方を想定した走行性能や仕事で使う際の利便性など、このクルマにはさまざまな観点から工夫が盛り込まれている。
例えばクルマの構造は、「エンジン縦置きFRレイアウト」を採用している。エンジンを前輪の後あたりに置く手法で、これによりアプローチアングル(クルマ先端の最下部と前輪の設地面が作る角度のこと)を広く取ることが可能になる。この角度が大きいとデコボコ道を走りやすい。つまり、悪路走破性が向上するのだ。
駆動方式は「副変速機付きパートタイム4WD」というもの。市街地などのオンロードでは後輪駆動の2WD、雪道やぬかるんだ道では4WDという具合に、路面の状況に合わせて駆動方式を変えられるのが特徴だ。
ハンターはライフルを積むし、林業に従事するユーザーはチェーンソーを積むであろう荷室についても、スズキはシンプルで使い勝手のよい作りにこだわった。乗用ニーズを意識した先代ジムニーでは、後席にアームレストやカップホルダーなどの装備を付けていたそうだが、新型では荷室の広さにこだわり、そういった装備を取り外して床もフラットにした。後席を倒すと、新型ジムニーの荷室容量は352Lに達する。
激戦のSUV市場で唯一無二の存在感
このように、実用性に特化したジムニーではあるが、その“本物感”こそ、スズキが「一般ユーザー」に分類する顧客層に人気を博す理由でもあるだろう。ブームに乗じて新規参入が相次ぐSUV市場にあって、ジムニーの佇まいと性格は唯一無二だ。
生き馬の目を抜く自動車業界だが、今回のジムニーも先代と同じく、長く売れ続けていくのではないだろうか。なぜなら、このクルマを必要とする顧客層は、日本では減っていったとしても世界では増えていきそうだし、どんなに都市化が進んだとしても、こういったクルマの需要は必ず残りそうだからだ。
ライドシェアや自動運手が普及し、人々がクルマを所有しなくなる“クルマのコモディティ化”が進展しても、最後の方まで生き残るのはジムニーのような存在なのかもしれない。「コモディティ化の対極にあるクルマだと個人的には思う」と新型ジムニーのデザイナーは話していた。