ニュータニックス・ジャパンは6月28日、都内で5月8日~同10日に米ニューオーリンズで開催した年次カンファレンス「.NEXT Conference 2018」で発表したNutanix Enterprise Cloud OSの新ソリューションについて、記者説明会を行った。
Nutanix Enterprise Cloud OSは、マルチクラウド対応でアプリケーションオーケストレーションとライフサイクル管理を提供する「Nutanix Calm」と、クラウドサービス「Nutanix Xi Cloud Services」を搭載したソフトウェアスタック。
今回、発表された新ソリューションはマルチクラウドのコスト最適化とコンプライアンスを提供する同社初のSaaS(Software as a Service)型サービス「Nutanix Beam」、データベースをシンプルにするPaaS(Platform as a Service)型の「Nutanix Era」、Enterprise Cloud OSのネットワーク機能「Nutanix Flow」(マイクロセグメンテーション)の3つとなる。
マルチクラウドのガバナンスにフォーカスした「Nutanix Beam」
Nutanix Beamは、同社が買収したMinjarのサービスがベースとなっており、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azureを対象にクラウド支出の管理に利用されてきた。
ニュータニックス・ジャパン シニアソリューションアーキテクトの鈴木孝規氏は「Nutanix Beamは、マルチクラウドのガバナンスにフォーカスしており、マルチクラウド対応でアプリケーションオーケストレーションとライフサイクル管理を提供する『Nutanix Calm』を、ビジネス視点からコストやセキュリティのコンプライアンスを管理するものだ」と述べた。
主な特徴として「コストの可視化と最適化」「財務状況のガバナンス」「インテリジェントな利用計画」「コンプライアンスの管理」の4点を挙げている。コストの可視化と最適化では、マルチクラウド環境を単一ダッシュボードで統合的にコストを可視化し、マシンインテリジェンスに基づく最適解の提案で分析することで、未使用リソースや十分に利用さていないリソースを適正、排除する。
財務状況のガバナンスに関しては、ポリシードリブンの複数チーム・部門への適正な予算管理と割当てによる予算管理や、コストの制御・管理、可視化されたデータドリブンに基づいて意思決定を行うことを可能としている。
インテリジェントな利用計画については、クラウドリソースの利用状況に対する継続的な推奨事項を提案することでプロアクティブな利用計画を立案できるほか、マシンインテリジェントによるコストの改善により消費行動を提案し、複雑なコスト管理・計画をシンプルな意思決定に導くという。
コンプライアンスの管理ではワンクリックでセキュリティとコンプライアンスの問題を是正し、HIPPAやISO、PCI-DSS、CIS、NiST、SOC-2などのポリシーを適用することでポリシーベースのコンプライアンスを可能としており、250超のビルトインのチェック項目を検査する。
これにより、あるべきクラウドにあるべきワークロードを実現可能とし、法律や物理法則・制約への対応、単一クラウドへのビジネス依存を解消できるという。
データベース管理の自動化・簡素化する「Nutanix Era」
Nutanix Eraについて鈴木氏は「1000人以上の従業員を抱える企業は、日々データベースのインスタンスが肥大化し、コピーもあるためストレージの容量に支障をきたす。そのような状況下におけるデータベース管理をシンプルにする」と、説く。
同ソリューションは「Copy Data Management(CDM)機能」と「タイムマシン機能」を備える。CDM機能は企業全体でデータベースのコピーデータ管理に伴い複雑化する運用管理や増加するコスト負担の軽減が図れ、アプリケーション固有のAPIにも対応する。
また、ソースデータベースをレプリカコピーすることも可能(Oracleのスタンバイインスタンスなど)とし、プライマリデータベースはNutanix上に配置されている必要はなく、どこにあってもCDM機能を利用できるという。
タイムマシン機能は、データベースの状態をSLAの対象となる任意の時点に複製・更新・復元する。同社の統合スナップショット技術を活用することで、データベースのスナップショットを作成し、設備投資支出(CapEx)コストを削減するほか、稼働中のデータベースは最後に記録されたトランザクションまでの、特定時点でのクローン作成やリカバリが可能。
まずはOracleとPostgreSQLのデータベースエンジンをサポートし、将来的にはそのほかの普及しているデータベースのサポートも予定している。バージョンは順次拡張していくが、アーリーアクセスとしてユーザーに試験してもらっているバージョンは「Oracle 11.2.0.4 & 12.1.0.2」、「PostgreSQL 9.6 & 10.3」となる。
SDNの機能を備えた「Nutanix Flow」
Nutanix Flowは、昨年の「.NEXT Conference 2017」で発表したマイクロセグメンテーションがベースとなっている。Acropolis Hypervisor(AHV)に統合された機能となり、ネットワークをワンクリックでシンプルに管理するという。
特徴としては「仮想化環境の可視化機能」「ファイアウォールではなくEast-Westトラフィックに対応するためのマイクロセグメンテーション機能」「サービスチェイン・ネットワーク機能の提供」の3点を挙げている。
なぜ、同社がNutanix Flowを提供するのかについて鈴木氏は「これまでは境界セキュリティをデータセンター(DC)の入口に置くケースが多かったが、境界セキュリティだけではDC内でスケールアウトのシステムに障害が発生した際に、横串で障害が発生してしまう。そのため、各VM(仮想マシン)・コンテナ単位でセキュリティを確保し、通信を行うことが必要となり、全体の管理をワンクリックで可能にする」と、説明した。
ユースケースとしては、グループ単位の隔離・検疫機能を必要とするVDIユーザー、アプリケーションセキュリティや環境分離を必要とするサーバ仮想化ユーザーなどを想定している。
将来的には買収したNetsilが提供するL7アプリケーションベースのマップ化と発見・検知するSaaSのアプリケーションと組み合わせ、監視機能を多様なクラウドで実現するという。