ダイハツ工業が新型軽乗用車「ミラ トコット」を発売した。顧客として「若い女性」に思い切ってフォーカスした新型車だが、あえてダイハツは“カワイイ”を封印し、“盛らない”クルマづくりに取り組んだという。その背景には、若年女性市場に対するどのような分析があるのか。
“盛る”のではなく“素の魅力”で勝負
ミラ トコットの開発を担当したダイハツ製品企画部の中島雅之チーフエンジニア(CE)は、このクルマを「“盛る”のではなく、新しい女性の感性に合わせ“素の魅力”、シンプルに向けて作りこんだ」とする。若年女性をターゲットにした商品が陥りがちな“カワイイ”の罠を回避したといったような口ぶりだが、このようなクルマづくりを決めた背景には、ダイハツ女性社員のプロジェクトチームによる調査結果があった。
「かわいすぎて、自分には無理かな」。女性社員プロジェクトチームの一員で、ミラ トコットの開発に携わったダイハツ製品企画部の木村友喜氏は、ダイハツ「ミラ ココア」などの“カワイイ”クルマが自分には合わないと感じている女性の意見を紹介した。顧客の声を徹底的に聞きこみ、商品に反映させるのがダイハツの強みと語る木村氏は、「近年は女性、特に初めてクルマを購入する若年層から、『自分に丁度いいクルマが見つからない』という声が聞かれるようになった」とし、「ベース車両に『かわいさ』や『格好よさ』といった要素を加える『盛る』という発想を転換し、徹底して素の魅力にこだわり、シンプルにしていくという考え」でクルマづくりに取り組んだという。
若年女性市場の見方をアップデート
木村氏は調査の中で、近年の若い女性の感性が変化していることに気づいた。具体的には「流行に左右されず、異性や他人にこびず、自分らしさを表現したい。一昔前の『もてファッション』、女性らしさというトレンドから、シンプルでありながら自分らしさの軸を持つ女性が増えている」という。
「女性向け」であることを前面に打ち出すダイハツだが、男性客についてはどう考えているのか。中島CEは「戦略的には割り切っていかざるをえない」とし、「ダイハツとしては若年男性、子育てから離れた夫婦などにも十分に勧められる商品と認識しているが、若い世代のお客様が欲しいというのが最大のポイントなので、最重要ターゲットとして若年女性という旗を揚げた。違うことを言うと、商品そのものがぼけて伝わってしまうので」と戦略的判断の背景を説明した。
そんな経緯で誕生したダイハツのミラ トコットとは、どういうクルマなのだろうか。