メルカリが直面する“0から1”の難しさ

「メルカリを使わない理由は機能面というより、『何となく面倒くさそう』と『何となく不安』の2つ」。メルカリ未使用者も意外に多いのではと踏んで、そういった人達にいかにしてリーチするのかと質問してみると、小泉社長はこのように切り出した。「一度(不用品を)売った人のリテンション(継続して使うこと)のレートは極めて高い」(以下、発言は小泉社長)し、不用品の出品・配送も「百聞は一見にしかず」で簡単だそうだが、メルカリを使ったことのない人にとって、やはり最初の1回はハードルが高い。

囲み取材に集まった報道陣を見回しつつ、「皆さんの家でも、非稼動のモノがかなりあるはず。でも、ある人にとっては絶対に使いたいモノだったりする。まだまだ流動化できる領域は大きいと思う」と話した小泉氏。ユーザー層の拡大に向けて大事なのは「まず、ジャンルを広げること」だという。

  • メルカリ上場会見のスライド

    日本における不用品の価値は年間7.6兆円とメルカリは見る。勝手な推測だが、その半分以上はスマホを使っていない人、あるいはスマホに慣れ親しんでいない人の持ち物なのではないだろうか

小泉氏によると、メルカリに出ているモノの多くはベビー・キッズ向けをはじめとするアパレル商品で、その次に多いのは本・DVDの類だという。このほかに「家電、家具、スマホ、ゴルフ用品、アウトドア用品(例えばテント)など」が増えれば、アプリ使用者の幅が広がるのではないかというのが小泉氏の考えだ。「例えばゴルフ用品などは、1シーズンくらい使って『ダメだな』という感じで売られているのだが、知られていない」

テック企業としては意外? 「ウェブ」の拡充が鍵に

もう1つ、ユーザーの年齢層と商品のジャンルを広げる上で小泉氏が注目するのが「ウェブ」だ。スマホを主軸とし、アプリの使い勝手を磨きこむことに傾注するメルカリでは、意外な感じもするのだが、ウェブに「リソースを割けていない」のが現状。ただ、年齢層が高い人や、より高額な商品を売買したいと望む人などからは「ウェブが欲しい」という声も聞くそうだ。「アプリが主軸であることは不変だが、補足的なところでウェブを強化できれば、ジャンルの拡大、ユーザー層の拡大が期待できるのでは」と小泉氏は分析する。

  • メルカリ上場セレモニー

    いかに商品のジャンルを増やし、ユーザーの年齢幅を広げるか。これが日本におけるメルカリの課題であり、可能性でもある部分だ

ユーザーの平均年齢を引き上げる上で、今回の上場は効果的かもしれない。上場企業なら信頼できると考える人が、一定数はいそうだからだ。今回の上場に関連し、多くの証券会社を訪れたであろう小泉氏によると、40~50代の証券会社社員が、ここへきてメルカリの利用を始めたとの話も耳にしたことがあるそうだ。

何はともあれ、誰かにとっては価値があるであろうモノが、灰にならずに済むのであれば喜ばしいことではあるし、そのための仕組みを使い勝手にこだわって作りこむメルカリが、上場で得る資金の振り向け先として「テクノロジー」を挙げていることにも期待が持てる。その価値は7兆円を超えるとメルカリが推定する日本全国の“不用品”が、少しでも多く欲しい人に届けばいいと思ったし、自分でもメルカリのアプリくらいは落としてみようかなと考えた次第だ。