起業を検討する参加者の不安を解消するためのワークショップ「起業は本当に難しいのか? アントレプレナーワークショップ」(株式会社ボーンレックス/マイナビニュース共催)が竹橋・パレスサイドビル マイナビルームで6月14日に開催された。会場には起業を検討する方や企業内起業家を目指す方など約30名の参加者が集まり、パネルディスカッションやワークショップ、交流会が行われた。

同セミナーには、事業立ち上げのプロフェッショナルであるYahoo!アカデミア学長の伊藤羊一氏、株式会社ボーンレックス代表取締役 室岡拓也氏が登壇。これまでの経験をもとにした事例から、参加者へアドバイスを送った。本稿では、3時間半にわたる特別セミナーの様子をピックアップしてお伝えしたい。

  • Yahoo!アカデミア学長 グロービス経営大学院客員教授 伊藤羊一氏

  • 株式会社ボーンレックス 代表取締役 室岡拓也氏

起業支援を仕事にしたボーンレックス

「みなさん、自分の人生を胸張って生きていると言えますか?」司会を務めるボーンレックスの長谷川寛樹氏は、この言葉で特別セミナーをスタートさせた。ボーンレックスは、起業・開業、新規事業立ち上げのサポートを行う会社だ。大手企業や中小企業、自治体、学校法人などさまざまなクライアントの新規事業を支援しているほか、自社での事業(家)育成も行う。具体的な新規事業立ち上げ支援サービスとして「代理出産モデル」や、ワンストップ型起業・開業支援サービス「ちから添え」などが用意されている。

同社は代表取締役の室岡氏が学生時代に始めた「夢だけを語り合う会議」に端を発しており、「夢に踏み出せない理由をすべて潰せるような会社」を目指して設立されたという。セミナーは中央大学ともコラボレーションしており、将来的に起業を志している学生もスタッフとして参加していた。

  • 特別セミナーの司会進行役を担当したボーンレックスの長谷川寛樹氏

ワークショップで浮き彫りになった「お金」問題

参加者はグループ内で自己紹介を行ったのち、20分のワークショップに入った。グループディスカッションのテーマは「起業する上で一番大切だと思うこと」「起業する上で不安/心配なこと」の2つだ。

各グループがこのテーマについてディスカッションし、「大切なこと」として人間関係(周囲の理解)、熱い気持ち、揺るがない想い、独創性などが、「不安/心配なこと」としてお金、経営者の素養、市場に受け入れられるか、走り続けられるかなどが挙げられた。とくに多くのグループが挙げたのが、お金の心配だ。これに対して室岡氏は「お金が心配って、どういう話? 」と、逆に参加者に聞き返す。

  • 各グループが「不安/心配なこと」として書き出した問題の中で、最も多かったのが「お金」だ

「お金のリスクとは、極論で言えば生きていけなくなるリスクですよね。でも、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有していて、どれだけ食べれなくなっても、日本はその人を助けなくちゃいけないんです。日本では生きていけなくなるリスクはほとんどないわけですね。実は日本はすごく起業のしやすい国なんですよ」(室岡氏)。

そのうえで室岡氏は「お金は一番見やすい問題点として一時的に表に出ているだけであって、本当の問題点はその裏側にある」と語り、詳しい説明を続ける。

  • 参加者のディスカッション結果を受け、トークセッションを行う室岡氏と伊藤氏。室岡氏はお金に関する持論を展開する

「お金は風と同じで、どこかが高気圧になったらどこかは低気圧になって循環しています。『ここで作ってあそこで売ると高く売れる』ということを知れば、どんな人でも商売に開花するんです。一度ハードルを越えてしまうと、その感覚が身についてくるでしょう。でも、そのプロセスを実行する前におじけづいてしまう人が多いんですね。問題はお金ではなく、この感覚があるか無いかです」(室岡氏)。

ボーンレックスも、起業時の事業と、安定した収益を得られるようになった事業は異なっていたという。起業時にどれだけしっかりした事業計画を立てたとしても、それは変化していくもの。"風"に確実に乗れる保証はないが、このような起業家の感覚を備えることが重要だと室岡氏はまとめる。