顔を覚えて「おもてなし」するクルマ
「ドライバーモニタリングシステム」はマルチファンクションディスプレイのバイザー部に取り付けた専用カメラを通して、ドライバーの顔の向きやまぶたの状況をモニタリングし、居眠りや脇見を検知した場合には警告して注意を促す技術だ。ここまでの機能であればレクサスなど他のクルマにも付いているのだが、スバルのシステムは、ドライバーが「誰か」まで認識できる。この技術をスバルは「SUBARU初」と表現しているが、同技術の説明員などの話では、ここまで踏み込んでいる自動車メーカーは現時点でスバルしかない様子だ。
運転手が誰だか分かると、クルマは何ができるのか。フォレスターではドライバーに合わせてシートポジションやドアミラー角度をアジャストしたり、エアコンの温度を調整したりするなどの「おもてなし機能」を提供する。ある家族では例えば、フォレスターに平日は母親が乗り、休日には父親が乗り、時々は息子が運転する、というケースも大いにありうる。そんな場合、乗った瞬間にクルマが自分のことを思い出してくれて、自分好みのアレンジにシートなどを調整してくれれば嬉しいだろう。このシステムには顔の情報を5人分まで登録しておけるとのことだ。
ただ、同技術にとって「おもてなし機能」は序の口という感じもする。ドライバーが誰かを特定できれば、その人に合わせたサービスをもっと幅広く提供できそうだからだ。コネクティッド機能と組み合わせれば、その可能性は更に広がりそうな気もする。
今後のアイデアは「いっぱいある」
同システムの説明員は、ドライバー認識技術を活用した今後のアイデアについて「今は言えないが、いっぱいある」と含みを持たせた。ただし、ドライバーが誰かを特定してサービス・機能を提供するには高いハードルもあるようだ。
運転手を認識できるとすれば、例えば特定の人にしかエンジンを始動させられないような仕組みを導入して、盗難防止に活用することも可能だ。しかし、「それは失敗できない領域で、まだそこまでは至っていない」とスバルの説明員は釘を刺す。顔情報を登録済みのドライバーの双子の弟が、本来であればエンジンスタートの権利がないにも関わらずフォレスターを動かせてしまっては、取り返しがつかないからだ。こういうケースが「1,000回に1回でも」(スバル説明員)起こるとすれば、同システムを次のステップに進ませることはできないというのがスバルの考えのようだ。
とはいえ、スバルが顔認識という領域に初めて踏み込んだことは注目すべきだろう。カメラの精度が上がって、ドライバーが誰かを百発百中で認識できるようになったとき、スバルが何を仕掛けてくるのかが今から楽しみだ。