全固体リチウムイオン電池(全固体LIB)でトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、パナソニックが手を組んだ。電気自動車(EV)普及の鍵を握る電池の領域では、各メーカーが独自の研究・開発を進めていて、密かな先手争いが熾烈を極めているものと思いきや、ライバルと目されていた3社が“日本連合”のような座組みで結集した格好だ。その理由とは。
各社が語った一枚岩になる意義
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「全固体リチウムイオン電池の研究開発プロジェクト第2期」の概要を発表した。
第1期(2013~2017年度)は全固体LIBを実現するための材料開発とその評価が中心だったが、この第2期(2018~2022年度)では一歩進んで、実用化を前提とした大型・大容量の全固体LIBを用いて、EVへの搭載の可否や量産技術への適合性を含めて評価し、その世界標準化を目指すとしている。
このため、参加する企業や団体が大幅に増えた。自動車・蓄電池・材料の各メーカー23社と大学・公的研究機関15法人が連携・協調し、全固体LIBの実現に向けた課題解決に乗り出したのである。実現へ向けた道筋として、2020年代の後半には第1世代の全固体LIBが主流となり、2030年代の前半から第2世代の全固体LIBへ移行するとの想定を示した。
第2期発足の発表会には、自動車メーカーや電機メーカーからも担当者が駆けつけた。トヨタ自動車 電池材料技術・研究部の射場英紀担当部長は、「長年、トヨタは全固体電池に取り組んでいるが、課題は山積している。こうした形で一枚岩となって開発に取り組めるのは心強く、ぜひとも実用化したい」と意気込みを述べた。
日産自動車 総合研究所研究企画部の森春仁部長は、「産官学での取り組みによって可能性が広がるので、安く、大量に、安定して製造するため、日本の英知を結集したい」と挨拶。本田技術研究所 常務執行役員(パワートレーン担当)の相田圭一氏は、「プラグインハイブリッド(PHV)やEVを拡大していく鍵は蓄電池であり、全固体LIBの潜在能力に期待している。ホンダでも独自の開発はしているが、オールジャパンで取り組むことにより、量産へ向け前進できるだろう」と語った。
パナソニック テクノロジーイノベーション本部 資源・エネルギー研究所の藤井映志所長は「海外メーカーに負けられないので、産官学のオールジャパンでの取り組みに期待するとともに、製造プロセスの面で研究・開発を牽引し、実用化につながるよう取り組みたい」と協力領域を明確にしながら抱負を述べた。
リチウムイオン電池で先行する中国の存在
各社のこうした熱意の背景にあるのは、既存のリチウムイオン電池の量産で先行する、中国などの海外勢に対する危機感であると語るのは、プロジェクトリーダーを務めるNEDO 次世代電池・水素部 統括研究員兼蓄電池開発室長の細井敬氏だ。その上で、「全固体LIBが将来的にコモディティ化する前に、日本から実用化することで、新技術で世界をリードし、差別化した技術によりうまみのあるビジネスを展開したい。そのためのプロジェクトだ」と思惑を語るのであった。
では、国の機関であるNEDOと、日本の産業を牽引する大手メーカーが期待を寄せる全固体リウムイオン電池には、どのような利点があるのか。