ウォールアートには真っ白な吹き出しにハッシュタグ「#RindowRainbow」が用意された。アーケードやベンチ、横断歩道が虹色に彩られる中、何色にも染まらない白は目を引くアクセントになっている。また、吹き出しの始まりの位置は子どもの目線に設定されている。
「多様性を表す虹を軸に、どんな方でも、どんなパートナー同士でも、自然にその写真に溶けこむことを目指しました。子どもなら『水色のおっきな絵がある!』、女の子なら『カラフルでカワイイ!』と、人によって解釈が変わるアートを作りたかったんです」。
看板が世界観を壊す! 同じハッシュタグを使ってもらうには?
SNSを拡散させる際に重要なハッシュタグにも独自の工夫がある。最近はよく、イベントで用意されたスポットに「"#〇〇〇〇"というハッシュタグをつけて投稿してください! 」とかかれた看板が立っている。しかし、このようにビジネス臭を強くしてしまうと、広告離れを起こしている若者が反応してくれないのだという。若者たちは、自分の世界観で写真を撮りたいのだ。
そこで前述したお台場ウォーターパークのジェニックスタジオでは、フォトスポットで撮影した写真にアートとして自然に映りこむよう、ウォールアートにハッシュタグを書いた。また「#お台場ウォーターパーク」はいかにも野暮ったく、世界観を壊してしまうので、名称はあえて略称である「#owp」にしている。これには撮影してから時間が経過していても、ハッシュタグを思い出してもらう効果もあるという。
「インスタ映えするスポットを作ろうと意識すると、露骨なプロモーションになりがちです。そうではなくて、若者が自分の価値観を表現できるアートスポットを作ることを意識すると良いと思います」
ハッシュタグはInstagramにもTwitterにもFacebookにもあるが、それぞれで意味も使い方もまったく異なると辻さんは説明する。
「Instagramの場合は、よりたくさんの人に自分の見せたい絵を届けるもの。自分の世界観を、見たい人に届けるためのものです。だからInstagramには共通項のあるハッシュタグをたくさんつける文化があります。対してTwitterは、ハッシュタグだけで機能する文化があると感じます。分かりやすい例だとハッシュタグによる大喜利ですね。"お題"のような長いハッシュタグが生まれて、それが会話のきっかけになって盛り上がれるんです。限られた文字数で投稿するTwitterならではの文化だと思います」。
SNS上でひたすら情報を追っていけば流れが見えてくる
どのSNSも、根本的な役割はコミュニケーションツールだ。しかし、その使われ方は年々変化している。Instagramではストーリーが日々の投稿に使われるようになってきており、タイムラインに載せる写真の完成度のハードルが上がってきているという。Twitterは、より即時性のある情報を求めるようになってきており、大人がニュースを見る感覚で、若者は何かあったらまずTwitterを見ているそうだ。Facebookは、そもそも若者は就職活動以外ではあまり利用しないが、昨今では動画コンテンツの豊富さが注目されてきている。SNSはリアルで若者に直接刺さるメディアであると同時に、時代を表すツールともいえるだろう。
最後に、辻さんにビジネスパーソンに向けた「SNSプロモーションの心得」を聞いてみた。
「一番大事なのは情報収集だと思います。私自身も何が流行っているかを徹底的に調べています。会社でずっとネットサーフィンをしていると遊んでいるように見られるかもしれませんが(笑)、大事な仕事だと思います。Instagramで仕事と関連するハッシュタグを片っ端からフォローしてみるとか、Facebookでネタ動画を見続けてみるとか。SNS上でひたすら情報を追っていけば流れが見えてきて、その文化が分かってくるんじゃないかなと思います。情報を追い続けていると、街中を歩いていても『あそこで写真を撮っている子たち、あの話題を読んだのかな?』とSNSとのつながりが分かったりして、とても楽しいですよね」。