高橋一生の深みに期待
――高橋一生さんは、池井戸作品でも3度目となりますね。
高橋さんには、銀行側の目線で、物語の重要な場面をキュッと締めていただきました。他の池井戸さんのドラマに出てらっしゃるということは頭にあったんですけど、それとは関係なく、少ない出番で深みの出る俳優さんにお願いしたいと思っていました。正義感のなかに、銀行としてのこの物語への関わり方を自然体で表現していただけたと思います。
――キャスティングや、撮影で苦労したところはどのようなところだったんですか?
スーツ姿の登場人物が多いので、例えば長瀬さんの赤松は「運送会社の社長」をイメージしたときに完全な細身シルエットではない方がいいとか、キャラクターに合わせて衣裳も考えました。岸部(一徳)さんやムロさんの髪型は、メイク部さんが提案してくれて。寺脇(康文)さんのリーゼント姿も、スタイリッシュではない刑事にしたかったので良かったと思います。
――ムロさんの髪型の苦労とは……?
最初、ちょっと膨らみすぎてるんじゃないかと思って、「これ、大丈夫なの?」と言ってしまいました(笑)。
でも実際に動いてみると「こういう人いるよね」という感じで、良いキャラクターになったと思います。
――小池栄子さんの演じる記者の榎本は、原作では男性の役でしたね。
やっぱり女性が少ない作品なので、増やしたいというところはありました。ビジネスウーマンで少し色気のあるような感じを出していただけました。小池さんと深田恭子さんという2人の女性の役で、生き方の違う女性像が表現できればと思いました。
原作では赤松家のストーリーもかなりなボリュームで描かれているのですが、映画では省かざるをえませんでした。短い家庭のシーンながらも、深田さんの存在感で外側にある物語を想像させることはできたんじゃないか、と思いました。実はかなり強い女性ですよね。
舞台からオーディションに
――赤松運送の門田役の阿部顕嵐さんは、けっこう抜擢感があるなと思いましたが、どのように決定されたんですか?
ジャニーズさんの舞台を拝見していて、オーディションに来ていただきました。オーディションではいくつかセリフをしゃべってもらったんですけど、台詞の裏の意味をちゃんと感じさせる言い回しができたので、これは賭けてみようかな、と思いました。
実際完成作を観ると、目が良かったんですよね。最初はすごく緊張していたんですけど、だんだんと撮影現場の雰囲気に溶け込んでいきました。本当にいいお芝居をしていただけたと思います。
――プロデューサーの方って、けっこう皆さん舞台を観ていらっしゃるんですね。
映画とちょっと違う面が見えるので、舞台はなるべく観るようにしていますね。舞台で面白いと思った方とは、どんどんお仕事をご一緒したいと思います。
――阿部さんからは、矢島プロデューサーに向けて「もし演じるならどの役がいいか」という斬新な質問を預かっていまして。
私がですか!? そうですね……岸部さんの役をやってみたいですね。上司にこういう人がいたら、怖いだろうなと思います(笑)。そういう、迫力のある役をやってみたいです。
――撮影現場で、印象的だったのはどんなシーンですか?
佐々木蔵之介さんのシーンはものすごく印象的でした。『超高速!参勤交代』でご一緒しているので、衣装合わせも無しに撮影当日でということになりました。方言のテープなども事前にお渡しはしていたんですが、現場に行った時にはもう、役に入り込んで、できていた。すごいなと思いました。
――池井戸先生も、佐々木さんの場面は印象的だったとおっしゃってました。
キーになる場面で、佐々木さんが見せる、ちょっと人生から外れてしまった、死んだような目。あれはなかなかできないですよね。
――これだけのキャストが出ているのがすごいですが、まとめる方の苦労はあったんですか?
キャスティング終わってしまったら現場にお願いするしかないので、基本的には監督にお任せしていました。ただ俳優さんのクランクイン&クランクアップには立ち会わなければならないんですが、スケジュールを見たら「毎日!」と驚きました(笑)。そんな珍しい作品ですし、それだけ豪華なキャストが数多く出ているので、ぜひ期待していただければと思います。
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■矢島孝プロデューサー
これまでの主な担当作品に『鴨川ホルモー』『東京家族』『超高速!参勤交代』『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』など。
(C)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会