どの瞬間に抜かれても成立するように
――台本を拝見していると、江口のセリフには結構文末に「…」という表記があって、中村さんに委ねられている印象を受けました。
でも、江口というキャラクターだったり、厨房組2人だったり、全体を踏まえた上で読んでいくと、ちゃんと地図になっているので、おのずとどんなテイストのものを残せばいいのかっていうのは「…」でも見えてくるんですよ。それに、今回の現場は「… 」1つにしても、説明してくれるんです。セットで撮影するときに、「ここでこのセリフがあって、こっちの画に行って、最後こっちに来ますので、そこでリアクションお願いします」って。それって、ドラマとしては普通のやり方だと思うんですけど、僕からすると、どの瞬間で抜かれてもちゃんと成立して面白くなるように、カメラがこっちに向いてなくても役として存在しなきゃいけないと思っているので、台本で「…」と任されたとしても、特段そこで何かを考えるということはないんです。
――ご自身と江口が似ている部分はありますか?
江口って結構思ったことを言うんですよ。7話で佐那(戸田恵梨香)のお兄ちゃん(佐藤隆太)が来た時も、みんな直接的には文句を言わないんですけど、江口は「ちょっと待っておまえ!」って言っちゃう。似ているとまでは言わないですけど、そういうところがカッコいいと思うので、この役をやれてよかったなと思いますね。あと、筋が通ってないことが嫌いなんですよ。ハルが自分に代わって総料理長になった時も、気持ちとしては悔しかったでしょうけど、腕を認めたらちゃんと支える。僕も、わりとフィルターを通さないで物事を見たい人間なので、似ているかなって思う部分ですね。
――朝ドラ『半分、青い。』で演じている正人くんはおっとりしていて、江口と振り幅が大きいと思うんですが、演じるにあたって戸惑うことはないんですか?
この振り幅は、僕の範疇では狭いほうです。若い頃は、女形をやったり、殺りく兵器を作る中学生をやったり、ハリネズミが進化した人間をやったりしてきたので、“人間の男性”をという共通点がある時点で、全然狭いです(笑)
調理シーンを見せたくて…
――劇中ではいろんな料理が出てきて、本当においしそうです。
隙あらば食べようとして、スタッフに怒られています(笑)
――印象に残ってる料理はありますか?
8話に出てきた鍋ですね。台本に「色とりどりの鍋に驚く王妃たち」って書いてあって、「色とりどりの鍋ってなんだろう」って気になっていたんですけど、海鮮系でおいしそうでしたね。それをずっとべーさんが食べたがっていました。「あれ、もう食べていいですかね?」って言ってくるので、いつも俺がスタッフに確認しています(笑)
――ご自身は料理をされるんですか?
ちょいちょいしてますね。半年前は、次の日が5時起きなのに夜中の2時までフライパン振ってたり(笑)。でも、今回は驚くほど調理シーンがないんですよ。きっと世の女子も見たいぞって思うので(笑)、「調理シーンを出してくれ」って言っているんですけど、プロデューサーさんが「まだ出さないですね(笑)」って。やっぱり、刑事役だったら警察手帳を出したいじゃないですか。だから、できるところを見せようと思って、ハルが玉子を割るシーンで、カットがかかる前に玉子を1個とって片手で割ったんですよ。高校生の時に月見バーガーをいっぱい作ってたから得意なんです(笑)。でも、きっとカットですね。
岩田剛典がチームTシャツを製作
――主演の岩田剛典さんは、プライム帯の連ドラ初主演ですが、印象はいかがでしょうか?
いやーかわいい顔していますよね。目がクリクリしてますから(笑)。岩ちゃんのキャラクターは、正直大変そうだなという印象があったんですけど、すぐに宇海さんになってました。この作品の構図として、基本的には総支配人の佐那という人物を通して僕ら従業員たちに働きかけてくるんですが、その距離感がキャラクターを生かしてと思うんですよ。宇海という人はずっと僕らにとって未知で不思議な人なんだけど、魅力も影響力もある人に育ってきて、従業員たちとの距離感で一体感も生まれてくるので、宇海との掛け算で生まれる距離の見せ方というのは、やりがいがありますね。岩ちゃんもそういう意識を持ってあの役をやっているので、一緒にものづくりをしている感覚があって、楽しいです。
――撮影現場は雰囲気が良さそうですね。
撮影が深くなってみんな眠くなってきたときに、たまたま円になって座っていたので、目が覚めるゲームないかな…と思って、何の気なしに「牛タンゲームでもやりますか」って提案したんですよ。そしたら「牛タンゲーム」を知らない人がいっぱいいて…。ルールを説明して「分かった」って言いながら、全然理解してない(宮川)大輔さんとか(笑)。あれは楽しかったですね。
――共演者同士で仲がいいんですね。
早く終わる日があったらみんなでご飯食べに行きますね。この間、岩ちゃんが、僕ら従業員の顔を並べたチームTシャツを作ってくれたんですよ。それを現場で配ったら、スタッフがみんなそろって着てて、「あぁ文化祭みたいで楽しいな」って思いました(笑)。やっぱり岩ちゃんはグループで活動しているから、そういう“和”でつくるっていう感覚があるんじゃないですかね。
――『崖っぷちホテル!』キャラクターのLINEスタンプができましたよね。出演者同士でも早速使われてるんですか?
僕のはそんなに使われてないです(笑)。(鈴木)浩介さんの「ビックリ」って驚くやつが人気ですね。でも、僕自身、LINEを始めたのが最近だったんですよ(笑)。江口みたいに古臭いところがあって「そんなもん電話じゃ電話!」みたいな感じだったんですけど、始めたら便利ですね。だから最初は、探り探り参加してました(笑)