富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、新規事業創出プロジェクト「Computing for Tomorrow」に取り組んでいる。このComputing for Tomorrowが、同社が取り組む「人に寄り添う」コンピューティングを具体化した、もうひとつの姿だ。

■新生・富士通クライアントコンピューティングの挑戦
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Computing for Tomorrowは、2016年2月にFCCLがスタートしてから2カ月後の同年4月、FCCL・齋藤邦彰社長の肝いりによって開始した社内プロジェクト。若手技術者などの自由な発想をもとに、PCやタブレットなどの既存製品の枠にとらわれない製品やサービスの創出を目指してきた。

  • 新生・富士通クライアントコンピューティングの挑戦【6】

    「Computing for Tomorrow」を表現したもの。とても分かりやすい

プロジェクトに参加する社員は、半年間ほど現業を離れて、プロジェクトに専任で取り組む。アイデアをもとに具体化し、毎月、役員にプロジェクトの進捗を報告する。半年ごとには、齋藤社長が出席する会議で成果が評価され、開発の継続や中止を決定することになる。

齋藤社長は、「若い人たちに挑戦の場を設けたかった。同時に、やるのならば、片手間でなく、真っ正面から取り組んで欲しいと考えた。将来に向けての投資である」と、Computing for Tomorrowを位置づけてきた。

プロジェクトは、複数が同時並行的に進められており、これまで3期生までがプロジェクトに参加してきた。デザインシンキングの手法を用いながら、顧客視点で新たな製品やサービスを創出する取り組みは、まさに、「人に寄り添う」コンピューティングの実現を目指すものになる。

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    富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長

Computing for Tomorrowの成果、いよいよ

Computing for Tomorrowの成果は、約2年を経過して、いよいよ形になろうとしている。そのひとつが、教育向けエッジコンピュータ「MIB(Men in Box)」だ。

教育分野における一般的なPCの利用環境は、学校内に設置されたサーバーと、各教室で使用するPCやタブレットなどのクライアントデバイスを、ネットワークで接続して利用している。対して教育向けエッジコンピュータは、学校サーバーとクライアントデバイスの間に、中間サーバーとして学校や教室に配置することを目指したもの。安定したネットワーク環境の実現や、セキュリティ、メンテナンスなどにおいてもメリットがあるという。

富士通が得意とする教育向けタブレットを組み合わせることで、「Smart Room Solution」として提供。通信環境をモニタリングして、発言をする児童や生徒のデバイスには、優先的にネットワーク帯域を割り当てたり、安定したネットワーク環境でスムーズな授業をサポートするといった、細かい制御が可能になる。また、外部からの不正アクセスをデバイスの手前で遮断するなど、エッジコンピュータならではのセキュリティ対策も注目点だ。

「技術的な観点での評価は完了している。あとは、政府の動きや電子教科書化などの動きと、MIBのビジネスモデルをどうすり合わせるかというフェーズに入ってきている」(FCCL・仁川進執行役員)。教育現場における実証実験も、すでに島根県の出雲市で行われており、こうした成果をもとに事業化につなげる考えだ。