今抱えているものを乗せた

――第5話以降は、営業職として仕事に邁進する展開も熱く、身につまされるところもありますが、役作りで参考にしたことなどはありますか?

自分はサラリーマンになったことはないですし、「そんなに甘くない」と言われたらぐうの音も出ないんですけど、社会の一員として働いている身なので、自分が今抱えてるものをしっかりと宮本に載せていけば、あらゆる方と握手できるんじゃないか、と信じてやりました。別にモデルもいないですし、あるのは宮本浩という役柄と、今まで自分が生きてきて見てきたもの、信じてきたものを吐き出すことだけでした。

ただ、原作の宮本って、手放しに前向きなんですよ。それは今の時代だと、どこか伝わらない気もして。そういう意味では「前を向かなきゃいけない、俺が向くしかないんだ」という匂いを少し、忍び込ませることができるんじゃないかと思って演じました。面白いのが、エレファントカシマシさんの主題歌に、まさにその気持ちが言語化されていたこと。強引にでも前を向いて、強引にでも誰かの前で笑って、ということが、ドラマとしてできるんじゃないかと思っていました。

――漫画の宮本との違いも実は込められていたんですね。

気づいて欲しいとも思っていないですし、普段は「こうやりました」とも言わないんですが、今、思い出しました。

――宮本が影響を受ける先輩・神保役の松山ケンイチさんと並ぶと、『デスノート Light up the NEW world』を思い出してしまう感じもありますが……。

世の中的にはそうかもしれないですね。神保さんを通しての松山さんしか見ていませんが、本当に素敵なんです。神保はすごく良い役なんですよ。僕、宮本じゃなかったら神保あの役をやりたいです。松山さんに本当に救われました。

今出すことに価値のある作品

――前回テレビ東京さんで主演されていた『銀と金』に続き、尖った作品だなと思いましたが、主演として感じられたことはありますか?

今回、尖っているつもりは全くないんですけどね。自分が思う、朝ドラくらいのつもりです(笑)。

――『バイプレイヤーズ』にも出演されたり、池の水も抜いたり、テレビ東京さんについてはどんな印象でしたか?

真ん中とは言わないけど、何か一つ時代を作っているような感じは、僕も受け取っています。個人的に場所を選んでるつもりはないんですが、たまたまテレビ東京さんの今やろうとしている枠組みの中に自分も入れてもらえて、すごく縁があると思っています。今のテレビ東京がここで『宮本から君へ』を出すという部分に、何か価値があるような気はします。

――どこか、テレビ東京さんも宮本的立場のような……?

それはやっぱあるような気がしますね。『宮本から君へ』ってすごいタイトルで、今回関わった人たちも、宮本から自分が受け取ったものが必ずありましたし、それぞれが”君”へ提示するものがあると思います。だから『テレビ東京から君へ』みたいな……よくわからないですけど(笑)。

――(笑)

少なくとも、現場にいるキャスト、スタッフ、真利子さん、みんなの思いはありますもんね。今回『宮本から君へ』という作品に触発された人が集まっていて、それ以上の会話は必要ないくらい、現場も作品に共鳴していたと思います。

■池松壮亮
1990年7月9日生まれ。福岡県出身。A型。2003年に公開された映画『ラストサムライ』で映画に初出演し注目を集め、以後、ドラマ、映画、舞台などで活躍。2014年には日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数々の映画賞を受賞。2016年には映画『ディストラクション・ベイビーズ』『海よりもまだ深く』『デスノート Light up the NEW world』など9本の映画に出演した。2018年は『万引き家族』(6月8日公開)『ウタモノガタリ』(6月22日公開)『君が君で君だ』(7月7日公開)『散り椿』(9月28日公開)の公開を予定している。テレビ東京ではドラマ『銀と金』(17)で主演、『バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』(18)にゲスト出演している。