マツダが「アテンザ」に大幅な改良を加え、予約受注を開始した。自動車業界では世界的なSUVブームが巻き起こっているが、マツダはセダンとワゴンというボディタイプを持つアテンザの改良に相当、力が入っている様子だ。市場動向と逆行することも辞さないマツダの動きだが、背景にはどんな考えがあるのだろうか。

  • マツダの新型「アテンザ」(セダン)

    マツダの新型「アテンザ」。予約受注は本日開始、発売は2018年6月21日だ

マツダ車全体に波及する「アテンザ」の商品価値

アテンザはマツダが同社のフラッグシップと位置づけるクルマで、ボディタイプはセダンとワゴンから選べる。開発を担当するマツダの脇家満主査は、アテンザを「マツダのフラッグシップとしてラインアップの先頭に立つクルマ。(ブランドメッセージである)『走る歓び』の理想に向け進化し続ける姿を示し、ブランドを牽引する存在」と表現する。商品改良でアテンザを進化させることについては、「クルマとしての基本車型であるセダンをしっかり作り込み、熟成させ、商品価値を上げることは、ラインアップ全体に波及効果があり、グローバル成長につながる」とした。これが、SUVブームの状況下でもマツダがアテンザに大幅な改良を加える理由の1つだ。

  • マツダの新型「アテンザ」(ワゴン)

    新型「アテンザ」のワゴン。現行型の販売状況を見ると、内訳としては最上級グレード「L Package」の構成比率が最も高く60%で、ディーゼルの比率も60%だそう。セダンとワゴンの比率は半々だ

では実際に、アテンザの何が変わったのか。まずデザインとしては、フロントとリアに変更点がある。フロントを一見すると分かるのは、グリルの形状が「横軸」から「メッシュ」へと変わっていること。その理由をチーフデザイナーの玉谷聡氏は「顔の彫りを深くしたかった」と説明した。

  • 現行型アテンザのフロントマスク
  • 新型アテンザのフロントマスク
  • 左が現行型、右が新型。新型「アテンザ」のメッシュの作り込みには「クラフトマンシップ」(玉谷氏)が注ぎ込まれているそうで、例えばグリルのセンターを挟んで左側と右側では、光の反射量が異なるような造形となっている。これにより一方が少し明るく見えて、もう一方は少し暗く見える。これが立体感につながるそうだ

現行アテンザのグリルは横方向に「フィン」が6本通っていて、そのフィンの深さで奥行きを表現していたのだが、どうしてもフィンの前端は前の方に出っ張っている感じだった。新型アテンザでは開口自体を深く奥に入れることで立体感を出している。

顔の彫りが深くなると、前から見たときクルマに奥行きが出る。「奥まっていく立体感の方向性」で、クルマの「前進感」や「スピード感」を表現しているというのが玉谷氏の解説だ。

デザインテーマは「Mature elegance」

もう1つ、デザインで大きく変わったのは「シグネチャーウィング」という部分だ。これはグリルの下を通って左右に伸びていく銀色のラインのことだが、スポーティーで若々しく、エネルギッシュな感じを表現していたV字型の現行アテンザに対し、新型はラインをヘッドランプの下に通している。その理由を玉谷氏は、「もともと持っているアテンザの背骨、軸がしっかり通っている所にシグネチャーウィングの流れを持ってきて、クルマ全体の骨格を強調しようと考えた」と話した。

  • マツダの新型「アテンザ」(セダン)

    シグネチャーラインがサイドのデザインと合わさって水平方向のラインを形成する

今回のデザインテーマ「Mature elegance」が示すように、マツダは新型アテンザで成熟したクルマの姿を見せようとしている。シグネチャーラインをエネルギッシュな感じから落ち着いた雰囲気に変えたのも、そのテーマに沿った改良といえるだろう。

全体に「大人っぽさ」を目指して変わった印象のデザインだが、これは同社が開発中の次世代商品群でも追求しているテーマらしい。玉谷氏も「もう少し大人のブランドになりたいという思いもあって、『デミオ』も大人っぽくなっている。アテンザはフラッグシップとして、最も大人でなければならない」と話していた。