町内会や自治会という言葉を聞いたこと、ありますか? 町や地域の人たちが集まって作った組織や団体のことで、その場所で住んでいる人たちが加入してさまざまな活動を行っています。

とはいえ、町内会や自治会が実際にどんな活動をしているのか、よくわかっていないという人も多いのでは。「引っ越したら入らないといけないのか」「加入したらいろいろ大変なんじゃないか」など……疑問は尽きません。

そこで今回、町内会や自治会について研究をされている首都大学東京の玉野和志教授に詳しいお話を伺いました。

  • 町内会や自治会って何をする組織なの?

    町内会や自治会、聞いたことはあるけど何をやっているのかよくわからない……

――そもそも町内会や自治会といった組織がなぜ生まれたのでしょうか。

玉野教授「現在のような町内会や自治会は、その地域に住んでいる人が全員加入することを前提にしています。これは世界的に見ても珍しい仕組みです。こうした組織が生まれたのは、大正や昭和といった近代になってからのことです」

――意外に歴史が浅いのですね。その時期に何かあったのですか?

玉野教授「大正時代は都市化の時期で、都市部へたくさんの人が流入しました。すると、それまでと異なり、隣に誰が住んでいるのかわかりにくくなってくるわけです。そうした不安を解消するために、町内会や自治会が組織されていきました。日頃から親睦を深めることで、ある意味自分の身を守ろうとしたんですね。私はこれを、共同防衛と呼んでいます」

――なるほど。隣人が誰なのかわからないという不安を払拭するためだったんですね。

玉野教授「戦時中はこれが『隣組』という形で、国家の末端組織として機能したわけですが、戦争が終わるとGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により解散させられます。戦争に協力した組織、とみなされたのです」

――でもその後、復活したと。

玉野教授「ええ。共同防衛という観点から、そういった組織はむしろ戦後こそ必要だったし、住民が自ら地域活動を行う分には行政からしたらありがたいですからね。70年代くらいからは行政が推奨するようになったし、阪神淡路大震災あたりからは、公然と『自治会に入りましょう』と言うようになりました。GHQに禁止されていた時代を知っている世代にとっては驚きだったようです」

――よくわかりました。現代の町内会や自治会の活動とはどんなものなのでしょう。

玉野教授「まず、盆踊りや夏祭りといった親睦事業があります。これは先ほどの共同防衛の観点がもとになっています。日頃からお互いによく知り合って、仲良くしましょうというわけです。それから防災訓練、そしてゴミの収集場所の決定ですね」

――ゴミを出す場所も町内会が?

玉野教授「はい。ゴミの収集場所は、町内会や自治会が行政と相談して決めている場合が多いんですよ。自分の家の前がゴミ置き場になるのは、嫌がる人が多いでしょう?」

――嫌ですね……。

玉野教授「行政が一方的に場所を決めると、揉めるんですよ。行政には文句を言いやすいですからね。ですから行政は『地域のみなさんで決めてください』と言うわけです。『みんなで決めた』なら文句も出にくいですからね。」

――なるほど! ところで、町内会や自治会に入るのは義務なのですか?

玉野教授「町内会・自治会は民間の組織ですから、強制力はありません。ですから入っても入らなくても問題はありません」

――そうでしたか!

玉野教授「ただ、町内会や自治会の立場からすると、全戸加入でないと意味がないですけどね。そうでないと共同防衛になりませんから」

  • 町内会や自治会って何をする組織なの?

    ゴミの収集場所を決めるのも町内会や自治会