一方で、個人向けPCの場合は、「直接競合するような製品が多い」と認めながらも、 次のように述べる。
「現在の個人向け市場は、新たなものを創出することが大切な市場。そこで抜け出したメーカーがシェアを取り、その実績をもとに新たな技術を法人市場へと展開していくことができるようになる。いまは技術変化が激しく、これまでにないようなデバイスの登場が求められている。
それを各社が模索している段階にある。言い換えれば、次世代のデバイスが生めためには、複数のメーカーが、多く弾を打つことが大切だともいえる。同じ領域に向けた製品を、複数のメーカーが投入した方が成功する可能性が高くなる」(齋藤社長)
特に、AIやロボティクス、AR/VR/MRといった新たな技術の活用においては、その傾向が高いと指摘する。
こうしてみると、現在の法人市場におけるポジションや個人市場における市場環境をとらえれば、一部の直接的な製品競合があっても、いまの体制を維持することが得策であるというわけだ。
これは、自動車メーカーの構図に近いものといえるかもしれない。
たとえば、フォルクスワーゲングループでは、フォルクスワーゲンのほかに、アウディやポルシェといった異なるブランドが存在し、それぞれのカスタマーベースを維持しながら、それぞれのカスタマーに向けて、独自性の強いクルマを投入している。一方で、バックエンドでは、共通部品として利用できるところは共同調達を行い、シナジーを生むことに成功している。
レノボグループは、海外でも同様に独立性を維持した戦略を取っており、ドイツでは、PCメーカーのMedionを買収後も独立したブランドとして展開。同様にスマホではモトローラを買収してブランドを継続。ブラジルのCCEも同様にブランドを維持している。自動車メーカーのように、異なる顧客ベースに対して、異なるブランドで、異なる製品を提供するという仕組みをレノボグループは採用しているのだ。
だが、ここまで独立性を維持しているのは、今回のFCCLが初めてだ。
富士通の独立性を最優先した仕組みは、これまでの経験をもとに、戦略的提携の関係を進化させたものだといえそうだ。その成果をどんな形で生み出せるのかが、レノボ傘下において、FCCLに求められた課題だといえる。