2017年11月2日、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)に、Lenovo Group Limited(レノボ・グループ・リミテッド)が51%を出資し、新生富士通クライアントコンピューティングがスタートすることが正式に発表された。
富士通の田中達也社長は、「富士通がPC事業で30年以上にわたって培ってきた製品開発力と製造能力に加えて、レノボが持つ世界屈指の調達力と、スケールメリットを活用することが、今回の戦略的提携の目的である。これにより、富士通ブランドのPCの商品力を強化し、国内およびグローバルの顧客に一層魅力的な製品を提供できる。まさに最高のコラボレーションであると考えている」と発言。
レノボ・グループ・リミテッド 会長兼CEOのヤンチン・ヤン氏は、「PCは、われわれのビジネスの原点であり、コアである。今回の提携は、世界で3番目の市場である日本において、信頼されるブランドとの提携となる。レノボの規模と効率性を、富士通の成長にも生かすことができる。今回のパートナーシップは日本におけるコミットメントを示したものであり、さまざまな選択肢を提供するものである。富士通とともに、PC業界を発展させたい」と述べた。
FCCLは、2018年5月2日付で、新体制による事業をスタート。代表取締役社長には、引き続き齋藤邦彰氏が就任し、社員数1,060人の体制となる。2017年6月1日時点では、FCCLの社員数が1,128人としており、それに比べると、1割ほど社員数が減少した形でスタートすることになった。
FCCLは、合弁会社となった後も、富士通ブランドのPCの開発、生産を行い、現在の製品ポートフォリオを維持する。FCCLの本社が入る神奈川県川崎市の富士通川崎工場、その開発部門のほか、営業部門、サポート部門などの体制もそのまま維持。
さらに、ノートPCを生産する島根富士通(島根県出雲市)をグループ企業として傘下に持つほか、富士通傘下でデスクトップPCを生産している福島県伊達市の富士通アイソテック(福島県伊達市)には、FCCLから生産を委託する形でデスクトップPCの生産を継続。また、Androidを搭載しているタブレットなどの一部製品については、タブレットや携帯電話を生産している富士通周辺機の社工場(兵庫県加東市)に同様に生産委託することになる。
なお、富士通の携帯電話事業も再編を発表しており、富士通によると、携帯端末事業を行う富士通コネクテッドテクノロジーズに、ファンドのポラリス・キャピタル・グループが70%を出資。富士通周辺機の社工場については、ポラリス・キャピタル・グループが新たに設立するジャパン・イーエム・ソリューションズに譲渡することになる。ジャパン・イーエム・ソリューションズには、ポラリス・キャピタル・グループが81%を、富士通が19%をそれぞれ出資する。
一方で、海外事業については、ドイツに拠点を持つ富士通テクノロジー・ソリューションズが、富士通の傘下のまま、PCの開発、生産を行うことになる。もともとFCCLとは緊密な関係がある会社だけに、FCCL傘下に移管することが想定されたが、体制はそのまま維持され、FCCLからの生産委託という仕組みを取ることになる。
実は、富士通テクノロジー・ソリューションズは、富士通ブランドのPCの生産において、全体の3割以上を占める重要な企業。昨今では、富士通テクノロジー・ソリューションズで開発された法人向けデスクトップPCを、日本市場向けに、富士通アイソテックが最終生産する形で出荷している。また、部品の共同調達でも新たなスキームを採用し、その緊密性はますます高まっているといえるだろう。今後、FCCLと富士通テクノロジー・ソリューションズとの関係がどう強化されるのかは、注目しておきたいポイントのひとつだ。