2018年の春先は気温差が激しい日が目立ち、例年に比べて体調を崩す人も多かったのではないだろうか。その体調悪化に伴い、風邪をひいて咳に悩んだ人もいることだろう。ただ、「風邪にしては咳が長引く」「発熱や喉の痛みなどの風邪の症状がないのに、咳だけが止まらない」といった症状に当てはまる場合は注意が必要かもしれない。その背景に意外な病気が潜んでいる可能性が考えられるからだ。
今回は、注意すべき咳症状に関し、聖マリアンナ医科大学 特任教授の井上肇医師に解説してもらった。
咳は異物を吐き出す生理反応
咳というと、ネガティブなイメージが先行しがちだが、実は咳は気管の中に侵入した異物を体外に排泄するという重要な役割を担っている。そのため、「風邪のときの咳は、気管や呼吸器の異物を吐き出そうとしているわけで、むやみに止めてはいけません」と井上医師は話す。
咳は、咳受容体を介して咳中枢が刺激されることで生じる生理反応だが、風邪でなくても受容体周囲に炎症が起きていると咳が出る。この「風邪以外のケースでの炎症」には注意しないといけない。
咳の原因として、風邪以外に考えられる疾患は以下の通りだ。
・気管支炎
・肺炎
・気管支喘息
・咳喘息
・肺ガン
・結核
「最近、よく咳が出るな」という程度の認識だったのに、実は肺ガンだったというケースもあるそうだ。
長引く咳は結核や肺ガンの可能性も
咳が長引いた際は、どのような病気のリスクが考えられるのだろうか。
井上医師は、微熱が続き、咳が止まらない場合は結核の可能性があると指摘。また、20歳以上で発熱などの目立った全身症状もないのに、1カ月以上も咳が続くケースでは、肺ガンも考えられるとのこと。
結核や肺ガンといった病気が否定されてから、気管支喘息や咳喘息、花粉症などのアレルギーなどを原因と考えるのが、医学的な見地のようだ。
日本は先進国の中でも結核が多い国だそうで、決して我々と無縁の病気ではない。「たかが咳」と侮らず、咳の症状がなかなかしずまらない場合は、呼吸器を扱っている内科や耳鼻咽喉科を受診しよう。