マルチデバイスが標準化する現代においてMicrosoftは、「デバイスを問わずにユーザー活動の表示・活用を可能とするMicrosoft Graphが根底にある。次のステップへ進めるため、空間データや家庭、オフィスや実データをGraph内に実在させる」(Nadella氏)ため、Microsoft HoloLensの活用やSaaSアプリをMicrosoft 365に取り入れるといった方策を示してきた。その具体例が「Microsoft Remote Assist」「Microsoft Layout」である。
いずれもMicrosoft HoloLens用アプリだが、Microsoft Remote Assistは現場作業員の安全性や効率性向上を目的に、空間や対象物を上級者と共有。インクや矢印を用いた注釈、画像などを挿入し、現場の問題を解決するソリューションだ。後者のMicrosoft Layoutは、3Dモデルをインポートし、実世界で室内レイアウトを容易に作成・編集するソリューションである。
読者諸氏も靴のフラグシップショップをレイアウトするとき、Microsoft HoloLensを用いて加工やレイアウトを行うアピールビデオを目にしたことがあるだろう。Microsoft Layoutは対象物の配置を仮想現実上で共有することで、意思決定に要する時間を大幅に短縮する。両者は2018年5月22日から早期アクセスを開始する予定のため、リンク先を参照してほしい。
AIで大きく変化する会議やコミュニケーション
会議における問題は物理的・時間的拘束であり、グローバルメンバーが集まる場面では言語の壁がある。これら複数の壁をなくそうと、Microsoftはさまざまな角度からアプローチしてきたが、今回のカンファレンスではAIを活用したシナリオを提示した。これまで自動翻訳を行うデモンストレーションは何度も目にしてきたが、各人の発言内容を速記としてテキスト化し、AIサービスが会議の重要部分をピックアップしてInsights&Notes欄にメモする……という動きは、実に興味深い。
AIが各所に盛り込まれ、これまで数ステップを要した作業を大幅に短縮する現実的なソリューションをMicrosoftは提示した。全体的に地味な印象を持ってしまうが、これまで個別展開していた機能を組み合わせ、現実的なシナリオに合致したソリューションに至ったと見るのが正しいだろう。
個人的には、Windows 10に関する言及がないのは残念だが、基調講演2日目はMicrosoft CVP Windows Phone Program Management, Joe Belfiore氏が登壇するため、Office 365との連携部分でWindows 10の話に期待したい。
なお、基調講演1日目の後半はMicrosoft EVP Cloud + AI Group, Scott Guthrie氏が登壇し、「Visual Studio Live Share」「Visual Studio App Center+GitHub」「DevOps project with AKS(Azure Kubernetes Service)」「Dev Spaces for AKS」「Azure Cosmos DB Multi Master write」「Integrating Azure Search with Cognitive Services」など、多くの開発者向け機能やMicrosoft Azureの新機能を披露した(本稿では割愛する)。
阿久津良和(Cactus)