――『Day』に収録されている新曲「Will~無色透明~」ですが、今回、伊秩弘将さんに曲を依頼した理由は?
せっかくベストアルバムに新曲を入れるのであれば、ベストアルバムに入れるべき曲、入れなくてはいけない曲がいいなって思いました。今回のベストアルバムは、自分の夢が実現したひとつの結果なんですよ。そんな自分に歌を歌うという夢を与えてくれたのがSPEEDでした。何者でもなかった自分が、SPEEDに出会い、歌を歌うという夢を持ち、その夢を追いかけて、今、LiSAという名前を背負って歌を歌っている。そんな自分にとってのスターだったSPEEDの曲を書いていた伊秩さんに、ずっと曲を書いてもらいたいと思っていたので、今回のベストアルバムのタイミングでお願いすることにしました。私、SPEEDのようになりたかったのではなく、SPEEDになりたかったんです。
――それはSPEEDのメンバーになりたかったということですか?
そうそう(笑)。同世代の、ちょっと上のお姉さんたちがカッコよく歌って踊っているのに憧れて、自分もその中の一人として歌いたかったんですよ。それが今では、誰かが私の歌っている姿を見て、自分も歌を歌いたいと思っているかもしれない。そんな立場になったからこそ、あらためて、自分が通ってきた道の始まりの人に会うべきだと思いました。
――ちなみに伊秩さんにどんな感じでリクエストしたのですか?
伊秩さんに書いてもらうのであれば、ちゃんと物語のある曲がLiSAの歴史の上では必要だと思ったので、ダンスミュージックの「Go! Go! Heaven」ではなく、どちらかというと「Starting Over」でお願いしますと(笑)。そうしたら伊秩さんが、「LiSAには“Tree”、根っこのしっかりと生えた木を感じたので、どっしりした曲がいいと思う」と言って、作ってくださったのが今回の曲になっています。
――歌詞はLiSAさんが書かれていますが、どういったイメージで書かれたのでしょうか?
ツリーと言われたので、「WiLL」ではなく「Tree」なのかなとも思ったのですが、何者でもなかった私に夢を与えてくれた伊秩さんの曲なので、今の自分が立っている未来の歌を書こうと。無色透明で、リュックに夢も希望も不安も全部詰め込んで、電車に飛び乗った私の未来、つまり“今”を書こうと思いました。
――“レガシー”というワードが耳に残る楽曲ですよね
人は生きていく中で、そこに何を残していけるかがすごく大事なことだと、表に立つようになってから思うようになりました。人間の寿命とはまた違う寿命がアーティストにはあるじゃないですか。その中で何ができるかが大事だと思うんですよ。私自身もレベッカさんだったり、ジュディマリさんだったり、たくさんの先輩達が残してきた音楽を聴いて育ってきたので、私もそんな遺産になるような人生を歩めたらいいなという思いを込めてレガシーという言葉を使っています。
――一方、『Way』には「ハローグッデイ」が新曲として収録されています
これはマルイさんのアニメCM「猫がくれたまぁるいしあわせ」のテーマソングなのですが、コンセプトが“まぁるいしあわせ”で、お別れなんだけど、それでも頑張ってみたら私ちょっと幸せ、みたいなことがテーマになっていたので、自分にもちょっと重なる部分があるなって思いました。「今日もいい日だっ!」って、ある意味、“幸せ探し”じゃないですか。それと一緒で、“気づいたらちょっと幸せ”というのも“幸せ探し”だと思ったので、悲しい季節でも、ちゃんと嬉しいことにつながっていく曲になればいいなと思って作りました。
――アーティストとしてではなく、素のLiSAさんに近いイメージの曲になっているように感じました
かなりパーソナルな、日常的な自分という感じかもしれませんね。(堀江)晶太くんと映像を見ながら、晶太くんが引いてくれるコードにあわせて、歌を載せながらメロディを作ったのですが、イメージとしては、悲しいことがあっても、みんなでグッデイにしていけたらいいなという思いを込めています。
――悲しみを含みつつも、ちょっとほっこりした感じにもなる曲ですよね
「こんなに涙流れちゃうのは大切だった証拠だってわかってるよ」というフレーズがあるのですが、それをアニメーションの中で、お父さんが亡くなって女の子が泣いている映像とあわせたくて、CMバージョンではちょっとイントロを伸ばしています。あと、個人的には「ヘイ!マイシスター!」ってイメージなんですけど、不特定多数の方が観るものなので、沢山の人に届くように、CMバージョンは「マイディア!」になっていたりもします。
――そして、「ROCK-mode」がニューバージョンになりました
これ、やばくないですか?「ROCK-mode」は1stアルバムに入っていた曲で、長年ライブでも歌い続けている比較的古い曲なんですけど、いまだにたくさんのリクエストをいただくんですよ。それで、あらためてベストアルバムに入れるにあたり、一緒にステージに立って、ファンの熱気を直接肌で感じてくれているPABLOさんにリアレンジをお願いしたら、冒頭からすごいことになっていて(笑)。PABLOさんは、“絶対的なロックスター感”だと言ってました。
――あらためてレコーディングしてみていかがでしたか?
最初にこの曲を歌ったとき、なんで田淵(智也)センパイは私にラップを歌わせるんだって思いました(笑)。ラップなんてやったことがなかったので、どうやって歌っていいかわからなかったんですよ。それからはいろいろな曲にラップが入っていたりもしますが……。
――そして「Believe in ourselves」は、先ほどもお話しましたが、「Believe in myself」のアンサーソングになっているんですね
結果としてはそうなりましたが、書き出したときは全然そんなつもりはありませんでした。一人で始まった夢が、いつの間にか沢山の人と見ている夢になり、みんながいるから歌える楽曲ばかりだなって、今の自分を振り返りながら書いていたら、自然とタイトルが「Believe in ourselves」になっていて、あれ?って感じです(笑)。もちろん、書いている途中、「Believe in myself」からの軌跡を思い浮かべてはいましたが、まさかタイトルまでそこに繋がるとは思わなかったんですよ。そうしたら田淵センパイが「Believe in ourselvesじゃね?」ってドヤってきたので、それはちょっとやりすぎじゃないかなとも思ったのですが、これ以上にしっくりくる言葉も出てこなかったので、そのまま採用された感じです。
――7年の月日を経て、「myself」が「ourselves」になったんですね
「Believe in myself」は、自分がシンガーとして、「いつかこの曲聴いた誰かが今を愛せたらいい」と思い、他人のために歌を歌うことを決意して、その夢が叶った日なんですよ。CDを出す、自分の名前がついた曲を出すという夢が叶った日から7年の月日を重ねて、一人で始まったはずが、みんなと一緒に歩いてきて、まだまだやりたいと思っている。まだやりたいと思うのは、やはりみんながいるからなんですよ。(田淵)センパイに泣きながら、「すごく嫌なことがいっぱいあるし、まじで超やめたい、何なんだよって思うことがいっぱいあるけど、そうじゃない人もいっぱいいて、その人たちのためだけに歌いたい。信じてくれる人がいるのであれば、その人のためだけに、その人たちが楽しく生きていけるような歌を一緒に作っていきたいし、その人たちのために歌いたい」って伝えて、作ってもらいました。この曲は、一緒に歩いてきてくれている人に対する感謝の曲であり、これからもLiSAはLiSAとして歌い続けますよという宣言の曲なのかもしれません。“見つけだしてくれたキミの笑い声が続きますように”というのが、“ourselves”の中での私の役目なんだろうなって。いろいろなことがあっても歌い続けて来られたのは、私を応援してくれる人たち、みんながいてくれたおかげ。そんな気持ちを込めた曲になっています。