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    レッドカーペットに登場した『Mother』日韓の関係者たち

『Woman』トルコではシーズン2の話も

このように、日本のドラマがトルコで人気を得るきっかけを作ったのは、日本テレビ制作の『Mother』だった。日本での放送から数年の月日を経て、トルコ版が16年10月から放送開始されると、初回から最終話(全33話)まで占拠率25%となり、視聴率1位を獲得。これに続いて日テレは『Woman』のトルコ版リメイクも成立させ、17年10月からトルコで放送が始まり、こちらも人気を得ている。トルコ版では、日本では今のところ存在しないシーズン2の制作話まで持ちあがっているほどだ。

『Mother』は韓国でもリメイクが成立。韓国TVNのネットワークにより、韓国を含むアジア10カ国で、韓国版全16話が今年1月から3月まで放送された。この韓国版が「MIPTV」の期間中、初開催されたカンヌ国際ドラマ祭「Canneseries(カンヌシリーズ)」でノミネートの快挙を果たし、来場した日本版オリジナルの次屋尚プロデューサー(日テレ)と韓国版のパク・ジヨンプロデューサー(スタジオ・ドラゴン)の日韓両プロデューサーによる初対談がカンヌで実現した。

韓国では賞を総なめ

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韓国版『Mother』主演のイ・ボヨン(左)とホ・ユル

次屋氏が「(日本では10年の)4月から始まるドラマでしたから、桜が咲く希望あふれる時期に『暗すぎる』という声が社内からもありましたが、制作したいと思ってやったドラマでした」と口火を切ると、パク氏も「韓国でも反対の声があり、まさに同じような状況でしたが、自信はありました。最終話までに視聴率は倍以上に増え、回を追うごとに、ファンが増えていきました」と明かした。

続いて、パク氏が次屋氏に芦田愛菜をキャスティングした決め手を聞くと、「当初、芦田愛菜さんの役の設定は6歳でしたが、オーディションにいらした芦田さんはまだ4歳だったんです。どうしても無理があると、周りに反対されたのですが、才能を秘めた芦田さんを諦めきれず、脚本家の坂元裕二さんに相談し、設定を6歳から5歳に変えてもらったんです」というエピソードを打ち明けられた。

韓国版の子役を務めたホ・ユルも、一般オーディションから選ばれ、芦田と同じく『Mother』で天才的な演技を見せ、一躍人気子役に。今月3日には、韓国で権威あるアワード「Baeksang Arts Awards」でテレビ部門の新人賞を受賞したことが発表された。韓国版『Mother』は同アワードでベスト・ドラマ賞も獲得し、2冠を果たしている。

この韓国版リメイクがカンヌで話題に上るたびに、オリジナルは日本であることが知れ渡り、トルコでの人気も相まって、『Mother』のリメイクの引き合いがさらに増えているという。新たにウクライナで、ロシア語版の制作が決定しており、ロシアなど旧独立国家共同体(CIS)全域で今後放送される計画が進められている。世界に広がりつつある『Mother』ブームから、日本の良作ドラマにスポットライトが当たる可能性は十分にありそうだ。

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■長谷川朋子(はせがわ・ともこ)
テレビ業界ジャーナリスト。2003年からテレビ、ラジオの放送業界誌記者。仏カンヌのテレビ見本市・MIP現地取材歴約10年。番組コンテンツの海外流通ビジネス事情を得意分野に多数媒体で執筆中。