事実上、目標を取り下げた理由は、マイルストーンとして掲げた2017年度の実績、そして、2018年度の見通しが計画と乖離しはじめたことにある。

  • 富士通が掲げていたマイルストーン

田中社長は、2017年度には営業利益5%ゾーン、2018年度には営業利益6%ゾーンを目指すことをマイルストーンに掲げ、営業利益率6%ゾーンに入ることで、過去最高の営業利益率を更新する予定だった。

田中社長は、「2015年度と2016年度でビジネスモデル変革をやりきり、つながるサービスに経営資源を集中した成果を、2017年度以降に利益率向上という明確な形で表していく計画であったが、現実はこの計画とは乖離している。営業利益率は、事業売却益などの特殊要因を除く本業ベースで実現を目指すとしてきたが、2017年度は特殊要因を除く本業ベースでは1296億円の営業利益となり、約550億円の計画未達となった。2017年度の計画未達、2018年度は減収減益予想と期待に反することになり、申し訳なく思う」と悔しさをにじませた。

  • 2017年度の実績と2018年度の見通し

2017年度業績は、売上収益が前年比0.8%減の4兆983億円、営業利益は同55.4%増の1824億円。当期純利益は同91.4%増の1693億円と過去最高になったが、営業利益率は4.5%と目標を下回った。また、発表した2018年度の業績見通しでは、売上収益が前年比4.8%減の3兆9000億円、営業利益は同23.3%減の1400億円、当期純利益は同35.0%減の1100億円とし、営業利益率は3.6%と、2017年度実績を下回る計画とした。特殊事項を除いた本業ベースでは、営業利益で300億円の増益を見込み、営業利益率は上昇するが、6%ゾーンには到達しない。

明らかになった課題

計画未達の要因は、いくつかある。

田中社長は、「『質を変える』取り組みの成果を享受するのに、時間がかかっている。そして、2017年度を通じて、改めて課題が明確になった」とし、「海外ビジネスを含めた先行投資のリターンが不十分であること」、「ネットワークビシネスにおける事業環境変化への対応が遅れたこと」、「想定以上に不採算が拡大したこと」の3点をあげた。

海外事業では黒字転換したものの、1.7%の営業利益率に留まったこと、次世代クラウドへの投資が先行したこと、IoT関連の新規領域拡大に向けた先行投資と戦略商談を進めた影響がマイナスとなったほか、金融分野でのハード一体型ソリーションビジネスでの顧客投資抑制の影響部物流が計画に届かなかったこと、SEビジネスにおける高い目標設定への未達、ネットワークブロダクトにおける国内向け携帯電話基地局の投資が想定以上に抑制された影響に加えて、競争環境の厳しさが加速したことも影響した。

ネットワークプロダクトを含むシステムプラットフォーム事業は、営業利益率が前年の8.1%から5.7%へと大きく減少。とくに、「5Gが本格的に立ち上がる2019年度後半から2020年までは、厳しい状況が継続することを想定しており、2018年度の計画も厳しい所要を前提に計画するとともに、事業の方向性について検討を進めている」と述べた。

そして、金融分野の大規模プロジェクトや公共分野のマイナンバー関連システムの開発ピークアウトなど、2017年度は大規模プロジェクトの端境期に当たったこともマイナスとなった。