サバイバル時代に向けたMVNOの生き残り策
ある意味で、生き残りのため自身が強くなることを目指す動きの象徴といえるのが、ソフトバンク傘下となったLINEモバイルや、1.7GHz帯の周波数帯を獲得し、キャリアとして携帯電話事業に参入することを表明した楽天である。だがもちろん、あくまで従来の独立系MVNOの立場を維持しながらも、強いMVNOとして生き残ろうとする動きもいくつか見られるようになってきた。
実際、「mineo」ブランドのケイ・オプティコムは、サービスを安価に利用できるキャンペーンを積極展開するなどここ最近攻めの姿勢を貫いており、その結果として4月10日に100万回線を突破したことを発表。MVNOとして大手の座を確固なものにしつつあるようだ。
また、カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のトーンモバイルは、従来端末とサービスを一体で提供することにこだわっていたが、4月26日から新たに、iPhone向けの「TONE SIM(for iPhone)」の提供を開始。iPhoneが安く利用できるだけでなく、子供の見守りなどトーンモバイルならではの安心・安全サービスを利用できることを訴求することで、国内では圧倒的多数を占めるiPhoneユーザーの獲得へと乗り出し、契約数の拡大を推し進めようとしている。
また強いMVNOとなった企業は、さらに次のステップに進もうとしている。個人・法人合わせて200万契約を獲得するなど、MVNOとして最大手ともいえるインターネット・イニシアティブ(IIJ)は、今年3月に、自身でSIMを発行できる「フルMVNO」としてサービスを提供することを発表。同社はフルMVNOとしてのサービスを、主として法人向けに展開するとしている。
その理由は、MVNOの利活用の幅を広げることで、早朝や夜間など余っている時間の帯域幅を有効活用するためだ。MVNOに貸し出される帯域は時間帯によらず一定であるため、昼間のトラフィックに合わせて広い帯域幅を借りると、他の時間帯は無駄が生じてしまう。その無駄な時間帯を減らして収入につなげることができれば、より多くの帯域幅を借りて通信速度を向上しやすくなり、他社より一層優位な立場に立つことができる訳だ。
仮に大手キャリアの反転攻勢がなかったとしても、既に700以上のMVNOが参入している現状、競争激化と淘汰の波から免れなかったのは確かだろう。それだけに、今年はMVNOがどのような戦略をとることで、生き残りの道を模索するかが注目されることになりそうだ。