市場のニーズにどこまで対応すべきか

まず気になるのは、デリカの個性が今後、どうなるかだ。トレンドを踏まえるのか、唯一無二であり続けるのか。この問いに大谷氏は、「どこまで答えていいか分からないが、基本的に、デリカの本拠地は四駆のSUVとしての性能を持ったミニバンだと思っている。この方向性での進化がベースとなる。ただ、ワンボックスミニバンではスペース、ユーティリティーが求められており、特に国内はそういう傾向なので、そちらにも欲を出して考えたい。ちょっと都合のいい解釈だが」と答えた。

さらに大谷氏は、パフォーマンス(走行性能)を維持するのが本筋と断った上で、「今のワンボックスは見た目がゴージャスで、そういう方向もトレンドとしてはあると思っている。インテリアも、より上質・高級なものが好まれているようなので、そちらも見ていかなければならない。(デリカが)孤高の存在というと聞こえはいいが、それだと、悪い意味では人がいない(市場のニーズからは外れる)というか、限定的なものになってしまう」と続けた。

  • 三菱自動車の3代目「デリカ スターワゴン」
  • 三菱自動車の4代目「デリカ スペースギア」
  • 左が3代目「デリカ スターワゴン」、右が4代目「デリカ スペースギア」

確かにミニバンの世界では、ゴージャスというか、うっかりすると「いかつい」と形容してみたくなるようなデザインが流行している。そんな状況だからこそ「デリカ」の独自性が際立っているとも思うのだが、大谷氏はトレンド(市場のニーズ)にも気を配りたいとの考えのようだ。

3列シートSUVに勢い、「デリカ」の市場環境は

次に聞いたのは市場環境についてだ。例えばマツダ「CX-8」のように、最近は、SUVながら3列シートが選べて、多人数乗車のニーズを満たしつつ、走りも楽しめることを売りするクルマが充実してきている。こういうSUVはミニバン市場を脅かす存在にも見えるが、この流れはデリカにとってプラスなのか、マイナスなのか。

「プラスだと思っている」。大谷氏は即答した上で、マツダ「CX-8」がディーゼルエンジンを搭載していることに触れつつ、「欧州でディーゼルの評価は下降気味だが、国内はマツダさんのおかげもあり、ディーゼルのボリュームが伸びている。我々もディーゼル中心でやっているので、刺激になっている」とした。つまり、ディーゼルの選択肢があって、大勢で乗れて、走りもいいクルマが求められているのが、今の市場環境であるとの認識のようだ。

  • 三菱自動車の「デリカ」

    次の「デリカ」はどんなクルマになるのか

これらの話を踏まえると、今年中に登場予定の次期デリカにとって、市場環境は悪くなさそうだ。クルマとしては、走行性能へのこだわりを堅持するのは間違いないようだが、外装・内装にトレンドをいかに反映させるかには注目したい。スペース重視の客層に向けては、車内の使い方、シートアレンジなどで何か工夫があるかもしれない。

ただし大谷氏は、「『これがデリカかよ』といわれるようなものになってはいけない」し、「『デリカでなければ』というところ、それを求めるお客様が多いので、その期待には応えなければ」とも明言していたので、少なくとも、突拍子もない格好のデリカが誕生する可能性は低いと見てよさそうだ。