通常の歌番組では見られないセット
同番組は、トークパートとライブパートを交互に収録していくというのが特徴の1つ。最近の音楽番組は、それぞれをまとめて収録することが多いが、「歌っている出演者を見ている他の出演者たちの顔を撮りたいというのが強くあったので、あえて交互に撮るということを意識したわけではなく、この番組はそういうものだと思い込んでいましたね」という。井上順が、ステージに立つ歌手に次々にチャチャを入れ、奥村チヨが「やりづらいわよ~、最悪!」と嘆くなど、歌う側と見る側のやり取りも見どころだ。
その動きを可能にしたのは、通常の歌番組では見られない、スペースをできるだけコンパクトにした個性的なスタジオセット。MCが座るトークセットから3方向に、畳の「和室」、ムーラン・ルージュをイメージした「洋室」、そしてMC卓の背景でひときわ存在感を放つ「赤富士」が連なっており、「出演者の皆さんがあっち行ったりこっち行ったりできるような空間を意識しました」と、狙いを明かしてくれた。
ただ、この収録スタイルのため、トークパートが終わるとスタッフやカメラがせわしなく動き回ってライブパートに突入し、ライブが終わると今度は素早くトークに戻るという段取りが何度も行われる形で進行。さらに、制作側からしてみると、司会を含め23組という出演者の収録ブロックのスケジュールを組み合わせるのも、相当苦労したそうだ。
『夜もヒッパレ』イズムの"音楽遊び"
番組では、三宅裕司が、前川清&クール・ファイブのステージに入り込み、ミニコントを繰り広げるといった、かつての『THE夜もヒッパレ』(1995~2002年、日本テレビ)をほうふつとさせる場面もあるが、何を隠そう佐藤氏は『夜もヒッパレ』でADからディレクターを担当していた張本人。今回はゲストに、当時司会を務めていた中山秀征や、常連ゲストだった井上順もいるが、他の歌手たちも含めて「テレビエンタテインメントで育ち、人気番組を築きあげてきた方々だから、演出家として贅沢な番組。ものすごく有能なプレイヤーだらけで、歌はもちろん、コント的な展開もプロフェッショナル」と舌を巻く。
古くは『ザ・ヒットパレード』『夢であいましょう』『シャボン玉ホリデー』『今夜は最高!』『THE夜もヒッパレ』など、テレビにおけるバラエティ番組というものは「音楽」と長年密接な関係にあったが、「今の傾向として、音楽番組は音楽番組、バラエティはバラエティというふうに分かれているので、こうした"音楽遊び"は、若い人から見たら『何だこれ?』って異質感だったかもしれないですね」と分析した。
2時間半の番組で、収録は朝から深夜にまで及んだが、「編集してて、本当に捨てるシーンがなかったです」と、今回も手応えを感じている様子。「普通の音楽番組だと、『この人とこの人が競演してほしい』とか『この人にあの歌をカバーしてもらいたい』とかアイデアを思いついても、たいがい実現できないんですけど、今回はほぼほぼ成立できたので、前回(3時間)より曲数は今回の方が多いんです。有名な人が歌う有名な曲がずっと続いていくので、全部楽しみにしてください」と呼びかけている。
(C)フジテレビ
1972年生まれ、福島県出身。『HEY!HEY!HEY!』『人志松本のすべらない話』など音楽番組やバラエティ番組の制作に携わり、現在は『Love music』の演出などを担当。