日野の下社長は異色のキャリア
日野は国内トラックメーカーとして最大手であり、トヨタ自動車が50.1%を出資して連結対象子会社とし、トヨタグループの商用車メーカーと位置づけている。
日野のトップは、このところトヨタから送り込まれるのが通例となっていたが、昨2017年6月に就任した下義生社長は日野のプロパーだ。商品企画や海外事業などを担当し、社長就任の1年前にはトヨタに出向して同社常務役員に就任。戦略副社長会事務局統括など、トヨタの中枢で修行してきた異色のキャリアを持つ。つまり、トヨタグループの日野を率いるためにトヨタで勉強してきたのであり、今回のVWトラック&バスとの提携も、トヨタとの連動の中で踏み切ったものといえよう。
また日野としては、昨今のeコマースの拡大による宅配事業の深刻なドライバー不足や、長時間勤務を背景とする事故の誘発など、輸送業界が抱える多様な「物流危機」に対応する必要があるし、商用車に求められる輸送価値の多様化や、新たな物流を支える方向への課題なども抱えていた。
VWで社長交代、事業再編の流れが商用車にも波及
一方のVWは、グループ傘下に12のブランドを抱える。乗用車はVWのほかアウディ、ポルシェ、シュコダ、セアト、ランボルギーニなどであり、商用車はMANとスカニアだ。一時はMANとスカニアが合併交渉を進めたが、物別れとなったいきさつもある。
このうちスカニアには、かつて日野と協業提携した因縁もあるのだ。日野とスカニアは2002年に提携を結び、日本市場ではスカニアのトラクターヘッドを日野ブランドで販売した。この関係は2011年の提携解消まで続いた。
この日野とスカニアの提携は、資本提携交渉に及んだ時期もあっただけに、今回の提携話の布石のようなものであったことは確かである。
またVW本社は、日野とVWトラック&バスの提携に合わせるように、社長交代を13日に発表。マティアス・ミュラー社長の任期が残る中、後任にヘルベルト・ディース氏が就任した。2015年のディーゼル不正発覚後に登板し、V字回復を達成したミュラー体制だったが、これからはBMW出身のディース体制に移行するわけだ。
ディース体制のVWは早速、事業組織の再編を打ち出した。傘下12ブランドを大衆車、高級車、スポーツカー・スーパーカー、トラック・バスの4組織に再編し、電動化、自動運転、サービス化の異次元競争に対応していくというのだ。
その中にあって、トラック・バスの商用車事業については、VWトラック&バスの株式を上場して商用車統括会社としての位置づけを強める方向であり、この流れの中に日野との提携も組み込まれているようだ。