1年が試金石である理由は、マーケティングの枠組みを超えて「デジタルトランスフォーメーションが急速に進む中で、ほとんどの業界が無関係ではいられなくなる」(安西氏)というメッセージだ。仮に、現時点で業界トップに位置している企業であっても、米タクシー業界に対してUberが殴り込んだように「競合含めて置いていかれる可能性がある」(安西氏)。だから、「自分たちはイケてる企業だ」という空気を1年で作っていけるのか、そういう意味での「勝負の1年」なのだろう。
もう少し具体的に現在のデジタル化の波で言うと、スマホ利用率は言わずもがな高まるばかり。しかも、モバイルとの親和性が高い業界の場合はPCよりスマホのトラフィックが多い。そうした環境では、従来はWebサービスのみの提供だったとしても、アプリ体験を含めて対応できるかが「かなり重要なポイント」(安西氏)。
前述の銀行は、将来的にさらなるパーソナライズメッセージの進化を目指している。それは、オンラインからオフラインまで統合し、一貫したメッセージを伝えられるかまで検討している。現在のテクノロジーでは実現できない部分もあるだろう。ただ、将来のロードマップまで組織一体となって目標を見据えるのであれば、近くもなく、遠くもない未来のはずだ。
「マーケティングがデジタルになる、というだけでなく、私たちも製品名を『Adobe Experience Cloud』と変えたように、顧客体験を含めてデジタル化が進んでいる。顧客体験が軸になるならば、それはオンラインに限らない。意識改革のみならず、関係部署を含めて『サービスをどう売っていくか』だけではなく、『お客さまのニーズ』という顧客視点をどれだけ持てるか。視点を変えることが重要」(安西氏)
安西氏は、コンサルティングチームとして「ビジネスが上手く行くのかだけでなく、その先の顧客体験をどう上手く行くようにするのかが重要と捉えている」という。アドビのデジタル製品を使えるようにするだけでなく、その先の先、さらにその先の体験をどう作り出すか。安西氏らがやることは、もはやアドビの領域を超えた使命なのかもしれない。