スーパースポーツにはついていけない人も

なぜ、ここまでアドベンチャーツアラーが盛り上がったのか。バイクの高性能化とライダーの高齢化が進んだためではないかと筆者は思っている。

スーパースポーツの最高峰と言える1,000ccクラスは、車両重量200キロ前後の車体に約200psのエンジンを積んでおり、公道で性能を出し切るのは不可能に近い。しかも、運動性能を追求する過程でシートは高く、ハンドルは低く、ステップは後方になり、極端な前傾姿勢を強いられる。

  • ホンダ「CBR1000RR」

    ホンダのスーパースポーツ「CBR1000RR」(画像提供:本田技研工業)

一方、ライダーの高齢化は進んでいる。これは日本だけではなく、欧州にもいえるらしい。自分を含めて体力も反射神経も落ちた多くの熟年ライダーにとって、1,000ccのスーパースポーツは悲しいけれど、ついていけない世界なのである。

なぜ「アドベンチャーツアラー」なのか

対するアドベンチャーツアラーは、オフロード走行を考慮したためもあって、日常的なシーンでも扱いやすいエンジン特性を持ち、立ち気味のライディングポジションとストロークが豊富なサスペンションは、長時間乗っても疲れにくい。多くはスクリーンも備わるので高速道路も辛くない。

  • スズキ「V-Strom 650XT ABS」

    長い時間を乗っても疲れにくいのがアドベンチャーツアラーの特徴の1つだ(画像はスズキ「Vストローム 650XT ABS」)

しかも、アドベンチャーツアラーは大柄で堂々としている。ハーレーダビッドソンに代表されるアメリカンツアラーに匹敵する存在感だ(ちなみに、米国ブランドのアドベンチャーツアラーはない)。スーパースポーツやアメリカン以外で自己主張をしたいというライダーにも向く。この立ち位置もSUVに近い。