阪根氏は、目指す"企業"としては「ソニー」、経営哲学の理想像は「松下幸之助」と話す。売上高の成長曲線は、ソニーをイメージし、「意外に長くない30年」(阪根氏)という期間の中で、1兆円という自己目標を見据えつつも、3500億円の売上高目標を掲げた。
なぜ、日本のB2C二大メーカーを志すのか。理由はモノづくりの大切さだ。昨今は金融、IT領域が大きく伸長する。これらの領域は業種横断的に「プラットフォーム化」を目指す稼ぎ方だ。だが阪根氏からすれば「やはりモノづくり、それが一番スケールする」。
実際、世界一の時価総額はアップルであり、日本一もトヨタだ。アップルはファブレス企業ではあるものの、誰もが手に取るiPhoneで時代を席巻する。
「大学院に居た時は『教授になりたい』と思って論文と同時に、経営哲学の本も読み漁った。その中で感じたことは、ビジネスの場は大学とは異なり、『戦争』の世界。勝つためには競争を排除しなければならない。ITの世界は競争が多く残るが、モノづくりは技術でぶっちぎれば競争のない世界になる」(阪根氏)
ランドロイドは、さまざまな要素技術を組み合わせており、一つ一つで見れば"オンリーワン"は少ないかもしれない。だが、全自動衣類折りたたみ機を作るための研究開発で培った技術は、時間と金がかかる。実際、阪根氏が歩んできた10年という歳月がそれを物語っている。
製品はバラバラでも「合理的」
かつて、モノづくりで世界をリードした日本だが、中国や韓国の台頭によって"没落"の危機に瀕している。だが阪根氏は、「日本人は集団行動に適しているし、モノづくりに必要なものはそれ。国として『新しいものを作り出す力がない』という人もいるが、電機に限らず独創的な製品はこれまでも出てきている」と話す。
阪根氏が指摘するのは「人がやらないことに挑戦するマインド」が欠けていること。小さく、中国に比べれば人も少ない。それでも、これからも「日本はまだまだやれるんだと強く示したい」と自身の思いを話す。その意思に対して、エンジニア60名のうち、40名がいわゆる一流メーカーから転職してきたという。「彼らは、優秀で個性的。この国はやっぱり凄いんだと感じる」(阪根氏)。
この技術者陣で作り出す商品は、ランドロイドを含む既製品3つに加えて4つ目、5つ目がある。「4つ目は粛々とプロジェクトを進めていて、5つ目は構想を練っているところ。どちらも楽しい」(阪根氏)。6つ目も検討をスタートさせているところだが、ブレスト段階にあり、「人々の生活を豊かにする、技術的ハードルが高いモノ」(阪根氏)。
これまでも、これからも、一つひとつの商品は関係性の薄い別々のセグメントで攻めていく。それは「それぞれの領域でイノベーションを起こせれば、これまでになかった情報価値が生まれるから」だという。ニーズからテーマを見つけてチャレンジする。シーズやソースを無視して新たなことに挑戦することが、ビジネスモデルとして合理的だと阪根氏は笑う。
「既成概念を崩していくことがかっこいいし、そう思われたい。『この会社は次に、何をやるんだろう』というワクワクした気持ちを持ってもらえる会社にしていきたい。3500億円、1兆円という目標は、逆算して『今何をしないと到達できないのか』と考えて粛々と進めるだけ。目標が高いとトラブルはつきものだが、色んなパンチを繰り出して、一つ一つ倒すだけ。心と身体が健康であれば、出来るものだと思っている」(阪根氏)