そこで現在NTTドコモが開発中なのが、マンホール型の基地局だ。地面に70cmほどの穴を掘り、そこに小型の基地局を設置するというものだ。海外ではスイステレコムに採用事例があるというが、日本では初となる。3月から札幌で実証実験が行われており、スモールセル基地局と同等の半径90m程度をカバーし、積雪45cmの雪の下からも問題なく通信できることが確認されたという。

  • マンホール型の基地局

  • マンホールの下に設置される基地局は両手で持ち歩けるほどの小型なもの。一応屋外で雨などに濡れても利用できるが、完全に浸水してしまった場合、どれだけ使えるかはこれから検証するという

マンホールの蓋にあたる部分はFRP製で、通常の黒い見かけだけでなく、レンガや石畳といった模様を施すこともできる。耐荷重量は25tと、マンホールの蓋でも最上級のものと同等の性能があるとのこと。ただし上に自動車が停まったりすると、電波が遮られて通信しにくくなるため、実際の運用では車道ではなく歩道に設置することになるという。

また既存のマンホールを活用するのではなく、新規に穴を掘って基地局を設置することになるとのことで、トータルでの費用は1箇所あたり1000万円弱になるという。これでも通常基地局を設置するよりは大幅に安い(スモールセル基地局よりは高い)。

  • 蓋の部分には模様を施すことでカモフラージュが可能。マンホールを目立たせたくない地域でも、景観を崩すことなく設置できる

駅前などのトラフィックが集中するエリアや、公園やテーマパークといった無電柱エリア、歴史的な街並みで基地局を目立たせにくい場所などでの活用が期待される。マンホール型基地局はこのあと、沖縄と東京での実証実験を経て2018年度内に導入される見込み。将来的には5Gの基盤としても活用される予定だ。

3大キャリアを取り巻く情勢は大きく変化しているが、やはり携帯電話会社としては、基盤となるネットワーク設備こそが重要な財産であり、会社の実力を示すバロメーターでもある。NTTドコモのネットワーク計画はここ数年、計画通りか、若干前倒しで実現するほど順調に推移しており、5Gに向けて着実に歩を進めていることが伺える。特にマンホール型基地局は、設置エリアの自由度が高まり、比較的低コストで密なネットワークを実現できる手段として今後、大きな威力を発揮することになりそうだ。