「スマートフォンでない」ことが求められる現場

だが、先にも触れた通りこれらの機能はスマートフォンに一通り備わっているものであり、あえて専用のデバイスを用意する必要があるのか、という疑問が湧く。この点について松田氏は、「業務用の端末なので、業務で使うという顔をしている必要がある」と話している。

特に接客の現場などで導入する場合などで、業務用端末を操作している姿が、スマートフォンをいじっているように見られてしまうのが嫌だという顧客もいるという。またスマートフォンでは必須となっているカメラ機能も、工場などでは御法度となる場合が多い。そうしたことから、スマートフォンとは明確に異なる企業ニーズに応えた専用デバイスが求められているのだそうだ。

  • BL-02の背面。工場などでの導入を想定し、スマートフォンでは一般的なカメラが搭載されていない

また一般的なスマートフォンはファームウェアのカスタマイズが制限されているため、例えば「車のエンジンがかかった時にデバイスをオンにし、エンジンを切ったらオフにする」といったようなカスタマイズは、専用端末でないと実現が難しいという。加えてスマートフォンはモデルチェンジの頻度が高いことから、長い間安定して同じ機種を供給してもらうという意味でも、専用端末のメリットがあるのだそうだ。

  • バンプレコーダー社と展開している道路インフラ管理のソリューション。車のエンジンをかけるとBL-02の電源が入るようファームウェアをカスタマイズしているという

松田氏は、少子高齢化や訪日外国人の増加によるインバウンド対応などといった社会課題と、それに伴う労働者不足や多言語対応など、企業が抱える課題を解決する上で、IoTの活用による業務効率化や業務の継承が大いに貢献すると考えているようだ。それだけに、BL-02の活用によって企業のIoTを一層支援していきたいと、松田氏は話している。

一方で通信事業者として見た場合、通信量が少ないIoTはネットワークによる売り上げがあまり見込めないので、通信を軸とした包括的なソリューションの提供によって収益を上げる必要がある。そうした意味でも、ネットワークだけでなく、汎用的な用途に応えられる専用のハードを提供するというビッグローブのアプローチは、IoTに詳しいとは限らない顧客を獲得する上で、有効に働くと考えられる。後はシステムも含めたソリューションをいかに幅広く展開できるかが、勝負になってくるといえそうだ。