Blu-ray映像特典『ROGUE』について
『仮面ライダービルド』Blu-rayコレクションVOL.1には、テレビシリーズの第1話から第12話が収録される。オンエア時のように告知テロップや合間のCMが入らず、高画質で本編が観られるというファンなら絶対に持っておきたい映像商品であり、さらには新作スピンオフドラマ『ROGUE』序章「NIGHT ROGUE RISES」、そして番組キャストによるトークコーナー、ゲームコーナーまでが映像特典として収録されている。
封入ブックレット(8P)も充実の内容とのことで、谷中氏によれば「ライターの用田邦憲氏が筆をふるっており、こんな部分まで(情報を)拾って、こんなに(内容を)ふくらませているのかと、いつも完成前のゲラを読んで楽しませてもらっています。『ビルド』の裏話がたっぷりあるので、ぜひブックレットを楽しんで」と強くアピールしていた。そして「『ROGUE』がシリアス風味で作っているので、キャストさんたちのトークやゲームのコーナーで彼らの"素"の顔に触れていただいて、楽しんでくださるとうれしい」と、映像特典の魅力についても語った。
ここで、『ROGUE』序章「NIGHT ROGUE RISES」(Blu-rayコレクションVOL.1収録)の上映に際し、『ROGUE』の脚本を手がけた赤松義正氏、監督の鈴村展弘氏が登壇。2人を加えた5人による『ROGUE』トークショーが始まった。
氷室幻徳を主役にしたスピンオフ作品になった経緯を大森氏に尋ねると「毎年、Blu-rayの特典ドラマをやってきていますが、いつも頭を悩ませるところです。テレビシリーズが半分をすぎたころにBlu-ray VOL.1が発売されまして、次のVOL.2が約3か月後という状況。それでも、序章、第2章、第3章……と観ても楽しめる内容にしなければなりませんからね。『ROGUE』の場合、ナイトローグ/幻徳が物語の中盤で一旦退場し、第23話で仮面ライダーローグになって再登場するので、仮面ライダーローグ誕生の秘密を明かすようなドラマが作れると考えたんです。クローズやグリスに比べて、ローグは誕生までの流れが見えていて、描きやすかったし、描く価値もありました」と、十分納得のいく具体的な理由が示された。
今回の映像特典には大森氏も力がこもっており、「何年か特典をやってきましたが、ついに来るところまで来たなと思いましたね。なんといっても、この作品のためにセットを建てましたから。やっちまったな、振り切ったな、という気分です」と、映像特典ながら独立したドラマとしても見応えある内容にしたいという意欲を表した。
ドラマの内容について谷中氏は「幻徳は『ビルド』の世界を象徴する重要人物のひとり。『戦争』という特殊な状況がなかったら、こんなパーソナリティの人がああいう行動を起こすことはないと思います。『ROGUE』では、テレビでは見ることができない幻徳の一面を描くことができました。非常に真面目な内容で、さらには過激なバイオレンスも含まれているので、VOL.2以降も期待してほしい」と、こちらも自信のほどをうかがわせた。
鈴村監督によると、『ROGUE』の撮影時は、ちょうど幻徳が『ビルド』テレビシリーズで一時退場していたタイミングだという。まさに、テレビの中で戦兎や龍我が西都の刺客と戦っていたころ、幻徳はまったく別の場所で異なる戦いを繰り広げていた。その全貌が明かされる内容となる。
鈴村監督は「主役が変わると、自然に演出テイストも変化します。幻徳が大人っぽい存在なので、テレビの『ビルド』よりも大人っぽい世界を目指しました」と、演出意図を明かした。また赤松氏は、脚本を執筆する際「幻徳がテレビ本編で描かれていない部分を見つけるため、頭をひねりながら何度も打ち合わせを重ねました。脚本を書いていて、幻徳がどういう奴なのかわからないときは、深夜に武藤さんのところへ電話して相談しましたね。『幻徳はこういう奴なんじゃないですかね?』と話したら、武藤さんから『いや~、そうじゃないな~』なんて言われたりして(笑)」と、『ROGUE』で脚本監修を務めた武藤将吾氏とも連絡を密にし、テレビシリーズと連動しながらも幻徳の新しい一面を引き出すべく脚本を作り上げたという苦労話を語った。
『ROGUE』の「序章」には、幻徳の少年時代からの友人であり、東都政府の実力者でもある布袋幸司(演:永山たかし)が登場。基本的にシリアスな空気で貫かれた作品ではあるが、劇中で幻徳と布袋がカラオケボックスで尾崎豊の「15の夜」を熱唱するくだりなどは、確かにテレビでは見られない幻徳の「人間らしさ」の部分が描かれている。こういった少しコミカルな風味のシーンについて、水上は「カラオケのくだりは、『ビルド』の中で初めて"遊べた"シーンですね。最初に1人でカラオケボックスに入るときでも、監督に相談しながら、店員とのやりとりでちょっとアドリブ的なセリフを加えたりしました」と、楽しそうな笑みを浮かべながら語った。
大森氏は幻徳の人物像について「幻徳という男は、本質的にラブリーなところがあるんです。憎めない育ちの良さから来る『脇の甘さ』ですね(笑)」と話し、YouTubeで配信されている「仮面ライダービルド変身講座 ナイトローグ編」などでも見せる「どんなことでも真面目に取り組むがゆえに笑いがおきてしまう」現象についても説明。
谷中氏は「幻徳は周りから理解されにくい、勘違いされやすいキャラクターなんですが、水上さんが幻徳を一番理解しているのが良かった。映像を観ていて、どこまでが水上さんか、幻徳なのかわからないときがあります。幻徳は水上さんじゃなければできない役柄です。基本は幻徳ってやっていることが最低なんですけど(笑)、それが愛すべき人物になっているのは、水上さんのおかげです」と、水上の演技力、存在感について絶賛した。鈴村監督もまた「変に器用すぎない、なんでも上手にこなす役者ではなく、自分と戦いながら真面目にひとつひとつ取り組んでいるところがいい。器用ではない部分に惹かれます」と、水上の役にかける姿勢を高く評価していた。
『ROGUE』の序章では、幻徳がナイトローグになるまでの経緯が主に描かれたが、第2章以降はどのような展開になるのだろうか。まだ詳細は明かされていないが、鈴村監督は「序章もいいんですけれど、このあと第2章では、幻徳がどうやって仮面ライダーローグになるか、という部分が描かれます。幻徳が地に落ちたところからどう這い上がっていくか、そういったところを観ていただけたら、幻徳をさらに魅力的に感じてもらえると思います」と、ファンの期待を煽るコメントを残した。
また谷中氏からは、「『ROGUE』は幻徳がいかにライダーになっていくかの物語なのですが、序章に出てきた布袋のように"ヒーローになりそこなってしまった"人たちという存在も、赤松さんと鈴村さんとできちんと描いてくださっています。それらの人たちの物語にも目を向けてくれたらうれしい」と、『ROGUE』を彩る多彩な登場キャラクターたちの魅力にも触れていた。
『ROGUE』も含め『仮面ライダービルド』という作品では、主人公の戦兎を筆頭に、キャラクターそれぞれに過酷な運命や宿命を背負わせる、ハードでシリアスな展開が際立っているように思える。これについて大森氏は「一回一回の"変身"に重みを持たせたい、という考えで作っているのが『ビルド』という作品です。人間が"苦難"に立ち向かうというのがひとつのテーマですから、立ち向かうに値するだけの苦難を本気で描くことになります。重いテーマではありますが、作る側の我々も真正面から逃げずに立ち向かい、描いていきたいと思います」と、ハードでシリアスなテーマに取り組む真剣な姿勢を示した。谷中氏もまた「『ビルド』のライダーたちは、戦争やスカイウォールという特殊な状況がなかったら、とてもヒーローにはなりえなかった人たちなんです。仮面ライダーとして戦うことを『運命』とする彼らを描くことが物語の重みを増す結果になり、そういった部分が『ビルド』を他の仮面ライダーシリーズと異なる印象にしているのではないでしょうか」と、『ビルド』独特の個性について分析した。
スピンオフ作品である『ROGUE』の展開も楽しみだが、いよいよ後半戦のストーリーに差しかかるテレビシリーズの行く末も実に気になるところだ。
大森氏は『ビルド』の今後についても、「ただいまオンエアは、折り返し地点となる第30話を迎えました。これから後半戦にさしかかりますが、少しずつ物語のスケールを広げながら、その上で"現実感"を保ったまま、武藤さんと一緒にアイデアを練り上げています。どうぞ今後も『ビルド』に注目してください。そして8月4日には劇場版の公開が控えています。こちらも、いま台本を作っている最中です。8月の公開にふさわしい映画になると思いますので、楽しみにしてください」と力をこめて語り、期待を寄せるファンの熱意に応えた。
『仮面ライダービルド』Blu-rayコレクションVOL.1(第1~12話収録)は東映ビデオより現在発売中。VOL.2(第13~24話)は2018年6月13日、VOL.3(第25~36話)は9月12日に発売予定。