国内生産300万台を死守したいトヨタ

トヨタにとって国内販売は、グローバル市場の中でも米国の240万台に次ぐ163万台(2017年)であり、中国の120万台を上回っている。ただ、今後の日本の自動車市場は、少子高齢化を背景とした人口減と消費構造の変化で縮小は避けられないとの見方が強い。

豊田章男社長も「国内生産300万台を何としてもキープしていく」と話しているように、トヨタはグローバル戦略を推進していく上で、母国日本での生産・販売をしっかり維持していくことを重視している。工場・販売店の雇用を守るためにも、国内販売の再強化は大きな経営課題だ。

トヨタの国内販売は、かつてのトヨタ自販が、全国各地の有力者をトヨタ販売店に募り築き上げた販売チャネル網を原点とする。1990年代までの国内販売でライバルだった日産自動車が「技術の日産」といわれたのに対し、トヨタが「販売のトヨタ」といわれたゆえんである。

  • トヨタのGR勢ぞろい

    「販売のトヨタ」を支えたのは全国の販売チャネル網だった

かつては多チャンネルが普通だった自動車業界だが…

現在、トヨタの販売会社は全国に280社あり、拠点数は5,000カ所に達する。販売チャネルとしては「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4チャネルがある。これにレクサスブランドの「レクサス店」が加わるので、トヨタ全体としては5チャネルということになる。

かつて日産やマツダが5チャネル体制を展開し、ホンダや三菱自動車工業も複数チャネル体制をとっていたが、トヨタ以外はいずれも統合一本化された。

トヨタとしても、中長期的に国内年販150万台の確保を前提とした国内営業戦略を進める上で、地域ビジネス多角化の方向を強めていく考えのようだ。今年1月末に開催した「全国トヨタ販売店代表者会議」では、豊田章男社長と6名の副社長が全国7地域を分担して担当することを明示している。「トヨタは、モビリティカンパニーに変わろうと闘っていく。地域のお客様に一番近い販売店もニーズを吸い上げ、地域を良くする活動に取組んで欲しい」。豊田社長は集結した全国のトヨタ販売店トップに呼びかけた。

今回の東京トヨタ販社統合は、大都市・東京の特殊な事情から踏み切った動きではあるが、全国画一のチャネル別営業体制からの別離という側面もありそうだ。トヨタはバリューチェーンビジネスの拡充・強化に加え、コネクティッドカーやカーシェアリングビジネスへの展開などに向け、あらためて国内基盤の強化に乗り出してきたわけである。