伝統的に強かった教育市場でグーグルが台頭
アップルが教育市場に力を入れるのには、この市場で失ってしまった存在感を再び高めたい狙いがあることは明白だ。アップルは元々教育市場の開拓に熱心であり、かつては米国を中心としてMacの導入を積極的に進め、教育市場で高いシェアを獲得していた。
しかしながら近年、教育市場におけるアップルのシェアは大幅に縮小している。その理由の1つは、iPhoneの成功によってアップルが教育市場への関心を失っていったことが挙げられる。アップルが教育市場に力を入れてきたのには、Macのシェアが小さいが故、ビジネスユースよりも教育など、比較的ニッチながらも確実性がある市場を開拓することで、Macの販売を増やす狙いがあったといえるだろう。
だがiPhoneを提供して以降、アップルはコンシューマー市場においてMacをはるかに上回る成功を収め、現在も日本などを主体に、スマートフォン市場で高いシェアを獲得している。より大きなビジネスを重視するあまり、教育市場に向けた対応が手薄になっていた感は否めない。
2つ目の理由は、教育市場におけるグーグルの台頭である。グーグルはライセンス料金が無料の「Chrome OS」と、それを搭載した低価格のコンピューター「Chromebook」を提供しているが、てこのChromebookが、現在米国を中心として教育市場で高いシェアを獲得するにまで急成長しているのだ。
Chromebookは単に安いというだけでなく、元々ネットワークに接続して利用することを前提に設計されている。それゆえグーグルは、教育市場向けの「Chrome Education」などを用意、デバイスの集中管理がしやすい仕組みなどを提供することによって、教育市場で高い支持を得てシェア拡大へとつなげているのだ。
アップルがコンシューマー市場へ注力している間に、グーグルがChromebookで教育市場を攻め、気が付けば高いシェアを獲得するに至ってしまった。そうした状況を見て、アップルは教育市場でのシェア奪還を推し進めるべく、比較的価格が安いiPadを活用して教育市場向けのアピールを強めるに至ったといえる。