そのため津田氏は、「本当に急激に伸びているプロダクトで、未来があって、業界が盛り上がり始めたところですので、業界を牽引していく Google でそのプロダクトに携われているのは個人的に嬉しいですし、いい経験になっていると思います」と、非常にやりがいを感じているようだ。
もちろん、調整が難しい部分もある。例えばActions on Google の品質として、Google 側が考えるレベルと、パートナーが考えるレベルに差がある場合があり、改善の調整が難しいという。そして、品質改善には、継続して開発するモチベーションも不可欠となるが、そのモチベーションをどこまで維持できるか、という部分も課題と津田氏は指摘する。
ボイスアシスタント分野の注目度の高さから、Actions on Googleに興味を示すパートナーも非常に多い。しかし現状では、Android アプリなどと違い、Actions on Google では収益化の要素が現状は存在しないため、開発モチベーションの維持が難しいのだ。
「新しいものにいち早く取り組むという部分をモチベーションとしてやっていただいています。しかし、我々としてはユーザーにとっていいものを出さないと使われなくなってしまうので、いいものを出した方がパートナー側にもいいと思っています。本来は、アプリのロンチ後も改善し続ける必要があるのですが、そこまでモチベーションを維持できるかという部分は難しいと思います」(津田氏)
新しいプラットフォームということもあり、まだまだ開発途上でActions on Google のプラットフォーム側にもバグがあるのも事実。
ただ、VUIという最先端のテクノロジー開発である以上、早急に対処が必要な重大なバグはともかく、とにかく世に放ってフィードバックを元に改善していくという手法が、Googleに限らず近年のVUIの目覚ましい発展に寄与している側面もある。一方で担当者の津田氏にとっては「パートナーからのバグの修正依頼との間で板挟みになることも多々ある」と苦労が耐えない様子だ。
そういった中でも、やりがいは非常にあると津田氏。
「日本のマーケットはこれだけ盛り上がっていて、Google としても日本には注力していますが、アメリカ本社の人たちは日本語がしゃべれないので、我々に頼ってもらわざるを得ないんです。我々がいなければこのプロダクトは日本で広がっていかないな、という気持ちはあるので、一人のメンバーとして貢献できているのは高いモチベーションになっています」(津田氏)
人々の生活の一部になり、当たり前に使われるように
津田氏に、Actions on Google を今後どのように使って欲しいか聞いたところ、「個人的なものですが」という前置きをしつつ、育児をしている人に使って欲しいとのことだった。
津田氏自身も、2017年に出産を経験しており、子供を抱っこしたり、授乳したりという育児の場面では、携帯やスマートフォンを操作出来ないと話す。そうした場面でも、Google Home であれば、声でテレビを付け、音楽を再生できる。「育児しているお父さんやお母さんにとって、Google Home は非常に便利なプロダクトと感じています」(津田氏)。
また、現在0歳児の子供の育児を行っている津田氏らしい提案もあった。
「Actions on Google アプリに『育児ノート』というものがあります。おむつを取り替えたり、授乳したりというそれぞれの時間を声で記録できるアプリです。ノートに記録するにしても携帯に記録するにしても、とても面倒なんですが、声で記録できるのはとても便利だと思います。ぜひ使ってもらって、便利さをわかってもらえると嬉しいなと思います」(津田氏)
Google Home などのボイスアシスタントが今後どう進化していくのか。津田氏は、人々の生活の一部になり、当たり前に使うようになってほしいと願う。
「Android やiOSが登場したときには、一部の人が"なんだこれは、面白いな"と言って使っている感じでしたが、今は多くの人が当たり前のようにアプリを使ってショッピングしたり、チャットをしたりする世界に急激になっています。それと同じように、ボイスアシスタントが生活にナチュラルに溶け込んで、生活の一部になるぐらいまで持っていきたいと思っています。それにはパートナーさんがとても重要で、レストランや美容院を予約したいといったことをボイスでできるようにならないと、人々の生活をサポートするといったところまで持って行けません。パートナーさんには重要な役割があると思いますので、我々としてはパートナーさんをサポートして、質の高いアプリを出してもらって、人々の生活を豊かにするというところを一緒にやっていきたいと思います」(津田氏)
Google Home を代表とするボイスアシスタントは、昨年登場したときのような盛り上がりから比べるとやや一服した感がある。いわゆるアーリーアダプタへのアプローチが一巡したと言ってもいいだろう。
今後は、スマートフォンが普及したのと同じように、一般の人たちへどこまで普及させられるかが課題となるはずで、それには津田氏も指摘するように、Google だけでなくパートナー企業の取り組みも重要となってくる。しかし、津田氏のような考えで取り組む人がGoogle にいる限り、前途は明るいと言えるだろう。