声優・内田彩が2月4日、東京・豊洲PITにて「Aya Uchida VALENTINE'S ♡ LIVE ~Song for you~」を開催。ちょっぴり早いバレンタインライブは、内田の歌声やパフォーマンスの持つ甘さもビターさも、その両方を味わえるものだった。1部2部と開催され、本稿では2部のレポートをお届けする。

  • 内田彩

▼BITTERもSWEETも、初っ端から実に濃厚

ハートの中に入ったライブロゴがメインスクリーンに映され、白と赤の風船やピンクのハート型のバルーンがふんだんに使われた、この日のメインステージ。まずはステージが無人のまま「with you」が歌い出される。すると頭サビ明けに上がったメインスクリーンのうしろには内田の姿が。

甘々な歌声を笑顔で披露しつつ、階段上という高さを利用してフロアをサーッと見回しご挨拶。ファンの側からもバッチリコールが入り、準備万端な様子をうかがわせる。大サビ後には自ら振る腕で会場をひとつにまとめ、マイクを持たない右手の人差し指でハートを描いて曲を締めくくる。

続く「Floating Heart」は、たまらない甘さは変わらずに、少々その中の芯が強くなったような感を与えるEDM。頭サビ明けには再びコールが響く。サビの早口も軽々ぴょんと乗りこなすように歌えば、2-Bメロでは歌詞に合わせてフロアに耳を向けたりとキュートな振る舞いで、表情も合わせて恋する女の子感を表現していく。

そして「Yellow Sweet」で歌声にはさらにもう少々大人っぽさが増すが、パフォーマンスはサビのラストにウインクを織り込んだり、間奏でフロアに投げキッスをプレゼントしたりと、この曲のヒロイン像にマッチするかわいげの見えるもの。絶妙なバランスをもって、最大限にこの曲の持つ魅力を発揮させていた。

MCでは、まずこの日のライブのコンセプトに合わせてバレンタインチョコの話題に。女子ゾーンに「チョコあげる予定ある人います?」と問いかけつつ、「もらえない人の気持ちもね、わかるわかる。そういう曲もいっぱい歌うから」と続け、先ほどとは違ったテイストの楽曲の披露も予告。早速ハードなナンバー「afraid...」で「BITTERゾーン」へと突入する。

ここからは生バンドを従えての歌唱となったが、その雄々しいサウンドのなかにおいて内田自身はスタンドマイクを前にまっすぐ正面を見据え、より大人感と強さの増した歌声を披露。さらにラスサビでは歌詞に沿う形で少々挑発的なパフォーマンスも飛び出す。

続いて、ハンドマイクでの披露となった「Melody」ではより感情を解き放った歌声に。しかし間奏で、フロアの盛り上がりぶりへのうれしさがにじんでいたのか、ほのかににんまりとした表情も浮かぶ。そこから歌唱パートに映る際には、一瞬わずかに顔を伏せ気味にしていたのだが、これはこの曲のみならずその後の曲でも多々観られた、彼女の表現者としてのスイッチの切替ポイントだったように見受けられた。

さらに続く「ONE WAY」までが、3曲連続でのBITTERゾーン。この曲ではお立ち台に登ってフロア中へと想いを振りまいていき、これまで以上に激情が描かれた曲らしい魅せ方をしつつ、儚く入った落ちサビでは歌声で次第に想いが高まっていくさまを表現。それが、たまらなく観客の胸を打つ。こうして内田は、冒頭6曲で甘くハッピーなものから激しいものまで、様々な恋の形を見せてくれたのだった。

▼初挑戦のライブ中コーナーは甘さも苦さも入り混じったものに?

と、ここで内田のライブには珍しい企画コーナー。BOXの中からスタッフやバンドメンバーからの内田宛のラブ(?)レターを紹介するというものだが、その中にはビターなもの(≒苦言)も含まれているとのこと。

1部ではビターばかりが飛び出したコーナーだったが、2部ではいきなり照明さんからの「大概の打ち上げはスタッフとアーティストが話す機会がなかなかないのに、わざわざ移動して気さくに話しかけてくれる」とのSWEETなレターに頬を緩ませ「こういうの! こういうのだよ!」と喜ぶ内田。

しかしそこからはBITTERが3連発。ドラム・SHiNからは「リハ中にカップ麺を1時間放置していた。食生活が心配です」との指摘が飛び出したが、これには「休憩中に半分食べて、『(ドン!と床を踏み)兵衛は少し置いておいたほうがおいしい』って聞いたから置いておいたら、リハで1時間経ってた」と弁解していた。

しかし最後にはギター・宮崎京一の「SWEETなのは、イヤモニの中で聴こえる彩ちゃんの歌声」とのレターを引き、「だって声優だもーん!」とご満悦の内田だった。ちなみにもう一枚残ったレターは「『Holiday』の仮歌詞を気に入ってくれて、続きを書いてくれたこと」との内容で、匿名での投書だったものの、書き手がベース・黒須克彦なのはバレバレなのだった。

そんなウキウキな気持ちになったところでライブは再開。中盤戦は「カレイドスコープロンド」からのスタートだ。この日初めての、しっかりとした振り付けのあるこの曲でのダンスは「美しい」の3文字がドンピシャ。女性らしいしなやかさと要点がピシピシ決まる精度とが兼ね備えられたダンスで、自らのステージを彩る。また、スクリーンに映る映像はタイトル通り万華鏡を連想させるものに。

そしてバレンタインライブらしく「チョコはあげられないけど、歌でプレゼントできれば!」と意気込む言葉に続いたのが「キックとパンチどっちがいい?」なのは、再び驚かされた。ファニーなボーカルでこの曲を歌う内田だが、1サビでの歌詞に合わせたキックとパンチ、そして歌声にはだいぶ重さが乗っていたようにも感じられた。またこの曲は、内田がいい意味で遊び尽くしていた曲。歌詞の随所をこの日限定仕様に変えつつ、2サビ明けには「チョコは関係ないから、豆を投げます!」と、曲の世界とは対照的にフロアにプレゼントを投げ入れる優しさも見せてくれた。

そのまま「心の中の鬼を退治したところで、みんなで楽しんでいきましょう!」と繋げクラップを呼び込んで「Holiday」へ。爽快なロックチューンに表情豊かな歌声を乗せ、フロアと一緒に楽しんでいく。サビはお立ち台で振付つきで披露し、最後はハートマークを作ってキメ。2サビ明けにはそのハートマークを作って「私にラブを届けて!」とフロアを煽り、ファンの「LOVE!」のコールで大盛り上がりを見せた。

そのコールに「かわいく言ってくれてありがとー!」と礼を述べ、「私ももっとみんなに『LOVE!』って言うことにするー!」と宣言。それをさっそく実行するかのように、素直な想いを届けに「Close to you」を歌唱。メロウなミドルナンバーを、微笑みながらフロアのあらゆる方向を向きながら歌い、ボーカルで魅せる曲に。その歌声は、心にじんわり沁み入るようなものだ。

続く「笑わないで」もミドルテンポのナンバーだが、直前とは違って切ない恋心を歌ったナンバーらしく、内田の笑顔にも歌声にもほのかに切なさが混じっているかのよう。地声でも出せそうな音域でのファルセットも、またいじらしく響く。