貴重な最後に立ち会えるのは光栄
――あらためて、『めちゃイケ』がここまで続いた理由は何だと思いますか?
片岡さんのやりたいことをやりたいようにやって来たことが良かったんじゃないでしょうか。あれは"片岡飛鳥ショー"なので。例えば放送作家に、伊藤(正宏)さん、高須(光聖)さん、(鈴木)おさむくんとか、今やボスキャラみたいな人がゾロゾロいるのに、その人たちが片岡さんのやりたいことを実現させるため集まっている。そこで、己のやりたいようにホームランだろうが三振だろうがやり続けてきたっていうことが重要だったんじゃないですかね。でも、もうほとんどやりたいことはやり尽くしたって言ってたんで良かったです。
――木村さんはブログで、終了に向けて「ワクワクしてる」と書かれていましたが、これはどういう心境なんですか?
こんなことを言ったら怒られるかもしれないですけど、『めちゃイケ』っていう土曜8時で20年以上にわたってやらせていただいた大きな番組が終わるところに立ち会えるということですね。番組って、途中でナレーターのすげ替えなんてしょっちゅうあるけど、『めちゃイケ』は最初から最後までメインのナレーターとして使っていただいた。この貴重な最後に立ち会えるというのは光栄なことなんです。
あと、この番組をやってると、必ず金曜・土曜に東京にいなきゃいけないんです。それがイヤだと言ってるじゃないんですよ。栄光の"土8"ですから。ただ現場はギリギリというか切羽詰まった状況で作ってるから、毎週ある種の"ハイ"状態になってるんですね。テレビをやることは魚河岸の競りにいるような興奮があったんです。昔は、まだナレーターがVTRの後半部分のナレーションを読んでるのに、前半部分だけテレビ局に持って行ってOAをスタートさせちゃったとか、そんなゾッとするような番組いっぱいありましたからね(笑)。もし、いま俺がトチったらこの番組の放送が飛んでしまう。何千万とか億の被害が出る。やるしかない、って腹が決まるんです。もうアドレナリンがドバッと出て、火事場の何とかヂカラで切り抜けるんですね。で、終わったらグッタリですよ。一方で、そんな毎週興奮の日常がなくなったら、何をやりたいんだろうというのが心のどこかにずっとあって、それがついに現実になる、という意味でのワクワクですね。
『めちゃイケ』とは…
――ちょっとした定年退職みたいな感覚ですか?
そうですね。自分から辞めるっていうのは言いませんよ。われわれが憧れていた『オレたちひょうきん族』(フジ、8年間)とか、『8時だョ!全員集合』(TBS、16年間)よりも、時間的には長くなってしまったわけですからね。それがある以上は終わりまでどっぷり浸かり続けるしかないでしょう(笑)。毒をくらわば皿までじゃないですけど。だから、さぁこの長いお祭りが終わったんだから次は何しようかなという心境です。
――展望はあるのですか?
突拍子もないことを言うと、ずっと、外国に住んでみたいと思ってたんですよ。実はハード面はクリアしていて、iPhoneとちょっとしたマイクがあれば、放送クオリティの音声を録って送ることは簡単にできるんです。もう何度かやっていて、東京の某キー局の大きな〇周年記念特番のナレーションは、9割方ぼくがアメリカの駐車場でレンタカーの中で読んだやつです(笑)。ちゃんと放送されてました(笑)。でも、この業界は、現場に来てナレーターの顔見ながらキューを出さないとなんか落ち着かない良い人たちばっかりなので…(笑)。可能ならばバンコクとかシンガポールあたりにいて、週末だけ日本に仕事しに来るとか、そんな生活も楽しそうだなぁなんて思いますね。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、木村さんにとって『めちゃイケ』とは何ですか?
人生の宝ですね。