中島氏は現在のMaaS市場の構造として、自動車メーカーを中心とした動きと、IT系サービス事業者を中心とした動きがあるとしたうえで、「この2つは決して競合するものではない」と分析する。

自動車メーカーが車両や制御システム、コネクテッドシステムを開発し、コネクテッドされた自動車をAPIを定義して解放することでオープンにしていく一方、ITサービス側はこれを利用して、顧客や別の事業者に対してプラットフォームを提供するという「水平分業」が発生していると解釈できる。

トヨタが提唱する「e-Palette」はその派生タイプであるといえる。中島氏は「車両制御APIを解放し、サードパーティが自動運転のミドルウェアを作っても良いという方針を打ち出したのは、業界にとって非常に大きな一歩。IT系サービス事業者にとっては大きなチャンスとなる」と語る。

  • モビリティサービスの基本アーキテクチャ

世界的に、2030年までは都市への集中がさらに進むものと考えられており、交通渋滞や土地の有効活用などが課題となる。さらに日本は、高齢化の進行により、買い物弱者・移動弱者の増加や労働人口の減少といった特有の課題も抱えている。一方で、日本ならではの優位性もある。労働人口が減少しているということは、積極的に人とロボットの共存共栄をしていく動きになりやすい状況であるとも捉えることができる。加えて、日本は世界屈指の自動車技術集積エリアだ。

中島氏は、「この優位性を生かすことで、日本独自のMaaSで世界を席巻できる千載一遇のチャンス」と語る。既存の業界構造にとらわれることなく、国をあげてMaaSに取り組みを加速させていく必要があるだろう。DeNAとしては、同社の強みであるITとAI技術によって、日本の交通の仕組みそのものをアップデートしていきたい考えだ。