昨今、自動運転車の死亡事故やFacebookのデータ流用スキャンダルなどで、世論だけでなく株式市場からも、テクノロジー企業に対する風当たりは強い。
Appleがイベントを開催した3月27日も、テクノロジー企業の株価は軒並み下落しており、FacebookとGoogleは4.5%、Teslaは8%以上、そしてTwitterは12%と大幅な下落に見舞われている。iPadが売上を押し上げると観測されたAppleは、かろうじて2.5%の下落で済んでいるが、明るい材料の中でも170ドルを割り込む事態だ。テクノロジー株が、成長株からリスク銘柄へと変化しつつある印象だ。
FacebookやTwitterは、プライバシー問題で議会の公聴会に呼ばれることになり、個人から集めた情報を活用した広告ビジネスモデルの成長そのものが曲がり角にさしかかる恐れすらある。同様のビジネスモデルを持つFacebookやGoogle、Twitterは、それそのものがビジネスであるため、ワシントンに対して切れるカードがないのだ。
しかし,Appleにはまだまだカードが残されている。プライバシーの問題では「ユーザーのデータを売り物にするビジネスには手を出さない」姿勢をかねてから明確にしており、他のシリコンバレー企業とは違うことを強い口調で強調し、繰り返している。
製造業と雇用の問題も、米国向けの先端製造業ファンドの創設による米国企業への投資や、Appleのサプライヤーの米国への生産移転など、トランプ政権に対する切り返しの施策を数多く用意してきた。FacebookやGoogleといった大企業であっても、こうした分かりやすいカードは手元にないのだ。
トランプ政権に対して、Appleとしての方針を貫く姿勢も示していかなければならない。今回のシカゴでのイベントは、シリコンバレー外の地域への貢献を示しながら、テクノロジー教育に対してポジティブであるべきというメッセージを伝える意図をくみ取ることができた。