様々な技術でトラフィック増加に対応

現在OCNモバイルONEで行われているトラフィック対策としては、速度制限中でも最初の150KBを速度制限なしにする「バースト転送」や、トラフィックコントロール装置によって混雑時に無駄なパケット再送を抑制する「TCP最適化」、動画などの先読みバッファーを減らす「httpsペーシング」といった機能を順次導入してきた。

  • バースト無し(左)のWebページでは画像が表示しきれていないが、バーストあり(右)では同じ時間で画像を含めてすべて表示できている

  • 同じ画像を表示するのにかかった時間を比較すると、TCP最適化なし(緑線)は混雑時にかなり時間がかかるが、最適化あり(赤線)は瞬間的な混雑にはやや弱いものの、混雑が続く時間帯では平均して短時間で表示を完了しており、効果のほどがわかる

今後は「QUIC」をペーシング対象に加えたり、BIGLOBEが採用している、動画や静止画の圧縮により容量を減らしスムーズに視聴できるような仕組み(ユーザーの同意が必要なオプトインの選択肢になるが)の導入、プロトコル毎のダイナミックな最適化といった技術面での自助努力が方向性として挙げられた。

また、ユーザーへ積極的な情報公開を進め、自社網の状況の「見える化」を進め、ユーザーのニーズに合わせたサービス設計をしていくとしている。

問題は帯域を食いつぶす、パーセンテージとしてはわずかなヘビーユーザーへの対策だ。ちなみに参考として、米国では4大キャリアは使い放題のアンリミテッドプランを提供しているが、やはり上位数パーセントが大きな帯域を占有しているため、月に一定量を使うと速度が落ちるかもしれない、という警告を表示して、一定の効果を得ているという。しかしOCNモバイルONEは、直近3日間の通信量が多いと1日帯域を規制する、いわゆる「終日規制」をかけていない。それがOCNを選択する理由の一つとして選ばれている側面があるため、こうした帯域制限による対策は検討中とするに止まった。

ヘビーユーザーの極端な利用がネットワーク全体に負荷をかけている状況は料金の公平性という観点からも問題があり、一方で制約の少なさを魅力にしている以上、あまり制限を強くしても反発を招いてしまう。バランスの難しい問題だが、OCNモバイルONEではユーザーに負担を強いることなく、できるだけ自助努力で、技術的に解消しようとしている点は好ましい。MVNOユーザー満足度調査では5位(MMD総研調べ)だったが、こうした努力が評価され、より高い評価を受けられるように期待したい。

フルMVNO化へも含みを持たす

終会後の質疑応答では、IIJがサービスを開始した「フルMVNO」の導入について質問が寄せられたが、これについて「検討していることは事実」と発言。「(IIJのような)法人向けやプリペイド向けにはメリットがある」としつつ、「eSIMとセットでないと提供しづらい」と見解を述べた。

ドコモとのフルMVNO契約についてはIIJが他社の参入についてなかなか難しそうだと発言していることや、同じNTTグループということでNTTドコモと事業内容が重なりかねないフルMVNO化は一筋縄ではないかないかもしれないが、設備投資や技術面での不安はほぼない。現在でもLINEモバイルなど、広くMVNE事業を進めているだけに、フルMVNO化すればより自由度の高いMVNE戦略も進められるだろう。