「サスペンド」でコスト削減、法人需要を狙う
フルMVNOの特徴として、まずはSIMカードに注目したが、加入者情報管理を活用すれば契約中の課金状態も自由にコントロールできるようになる。こうした「SIMライフサイクル」を自社で握れるできることが、フルMVNOの強みといえる。
これを活用できそうなシナリオが、IoTや保守業務の分野だ。業務用機器の制御にLTE通信を活用する例は広がっているが、除雪車のように通年で利用しないものであっても、毎月の回線費用がかかる問題があった
そこでIIJがフルMVNOで提供するのが「サスペンド」機能だ。回線を解約するのではなく休眠状態にすることで、毎月の維持費はわずか30円になるという。しかも遠隔から操作でき、月内にサスペンドした場合は日割り計算になるため、本当に必要な日数だけ通信機能を利用できるのが特徴だ。
海外展開にも注目だ。6月には海外ローミングを開始予定となっているが、フルMVNOでは海外キャリアとのローミングではない直接接続も可能になるという。これまで海外との通信は割高なイメージがあったが、接続形態によっては海外現地の安い料金で使える可能性も見えてくる。
一方でフルMVNOは、従来型MVNOにはなかった課題も抱えている。まず、音声通話サービスは提供されず、当面はデータ通信のみに限られる。そのためスマホのメイン回線ではなく、IoTやプリペイドなど用途はやや限定的になるだろう。
また、ドコモとは別のキャリアという立て付けになることから、フルMVNOのSIMを使うには、ドコモの端末であってもSIMロックを解除する必要がある。これまでドコモ系のMVNOはSIMロックされた端末でも使えていただけに、注意を要する点だ。
このようにフルMVNOにはメリットとデメリットの両面があるものの、従来型のMVNOとはうまく棲み分けていく存在になりそうだ。従来型MVNOが似たような料金プランやサービスに落ち着きつつある中で、フルMVNOがこれまでにない市場を開拓できるか注目したい。